君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ11)

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入学から1週ほど経った日の事。
ジャージ姿の一年一同は、３年と共にグランドに集められていた。
今まで３人でやってきた体術が、なんと今日からは毎度３年生監修だという。

「おはよ。」

「おはようございます。」

といっても3年生は全員制服姿のまま。
伊地知は体術が苦手のようで、終始ため息をついており、今日は三年と合同ということもあり、ため息の数が倍以上であった。
一方Aは一年生の中で、経験もあり頭一つずば抜けている状況。
日葵と伊地知には手を抜いてでも勝つほどの余裕があった。

「まずは3人の実力が見てみたいな。見せてもらってもいいかな？」

「ペアはどうしたらいいですか？」

「実力差はどうなってる？」

「Aがすごく強いです。私と伊地知くんはあまり。」

「2対1はしたことある？」

日葵に対しての傑の返答で一同は首を横に振る。
確かに八九寺に生まれた以上幼いころから鍛えられてきたが、流石に2対1は勝てる気がしなかった。

「じゃあそうしよう。」

「まじですか？」

「物は試し様だよA。」

「弱音吐いてんの？ダッセ。」

「やります。」

挨拶すらしなかった悟が初めて出した言葉に腹が立ったAは2対1を受け入れ、腹をくくった。

「よーい、はじめ。」

硝子の合図で始まった体術。
ぎこちなく始まった格闘は、睨み合いから始まる。

「Aひよってね？」

またもや煽る悟にAは怒りマークと頭に３つもつけ、わかりましたよと言わんばかりに攻めに転じた。
A特有の攻める瞬間の踏み込みで一気に日葵まで距離を詰めると、威力などは弱めつつ蹴りを入れる。
その間に間合いに入る伊地知に気づいてないはずがなく、日葵がよろけている間に伊地知への対処をし、二回ほどブロックした後、がら空きの腹を正面から蹴る。
その後5分ほどの攻防を続けたのち、硝子の合図で向き直った。

「私は2人を教えるから、悟はAを頼むよ、」

「は？なんで俺が。」

「頼んだね。」

硝子は反転術式の持ち主。医療のみであり体術は全くの専門外なので、傑が伊地知と日葵陣営。悟がAのフィードバックをすることとなった。

「お前構えてみろよ。」

「こうですか？」

「あー、ここ。」

構えたときの腕の位置を指さされ、悟が角度を直す。

「脇閉めたほうが力が籠る。あと目線。」

悟はAの目線まで腰を低くすると、Aの握る握り拳をAの目の隣まで上げ、目線の位置を示す。