叶うなら共に(luz) ページ47
俺はある帝国の第一王子である。
と言っても俺に自覚はない。
『光、そろそろ王になるんだから許嫁の1人や2人くらい決めたら?』
この口うるさい女は幼馴染であり家族ぐるみで祖父祖母の代からうちに仕えているメイド。
「うるっさいわ、好き勝手にやらせてや」
冷たくそう突き放すような言い方をする。
こいつはきっと覚えていないんだろう。
幼いころ、結婚の約束をしたことなんて。
「ずっと信じてたのは俺だけやったんやな…」
そう呟いたもののAには届いていない。
『そんなこと言っても、仕方ないじゃない
この国の決まりなんだから。』
ため息をついて、考えておいてよね、というと俺の前から去るA。
「俺は許嫁なんて自分で決めるつもりはないから勝手に決めておいてや」
と父親に告げる。
父親は目を丸くしていたが、継ぐことが決まっている以上許嫁の決定は必要不可欠である。
あまり無理強いはしたくないと言ってくれたのだが渋々了承してくれた。
その日の夜、城ではパーティーが開かれた。
俺の王継承を祝ってのパーティーである。
勿論、許嫁の座を手に入れるために貴族や他国の王女たちも沢山参加している。
散々声をかけられて疲れてしまった俺は中庭に出る。
そこでは、誰かの話し声がする。
『あの、それは先ほどからお断りしているはずでは…』
「いいじゃんいいじゃん、俺んとこおいでよ」
隣国の王子に手をつかまれているA。
王子ということもあり、なかなか手荒に扱えないのだろう。
言葉は丁寧に、あまり抵抗しているようには見られない。
「…こいつ、俺んとこのメイドなんやけど。
…nqrse」
「おーこわ、知ってるよ
でもほら、俺の国は恋愛結婚ができるから。
気に入ったから連れ帰って結婚しようかなって」
「ふざけんな、こいつは俺の」
そう言って肩を抱き牽制する。
「分かったからそんな怖い顔しないでよね
じゃあねAちゃん、また機会があったら」
nqrseはひらひらと手を振りパーティー会場に戻って行った。
Aは俺におとなしく肩を抱かれたままおとなしくしている。
イライラしていたから気付かなかったが、わずかに震えているようだ。
「もう、大丈夫やから」
そう言うと、ありがと、とか細い声が帰ってくる。
もう今日はパーティーに戻るつもりもない。
Aを自分の部屋に連れ帰って鍵をかけた。
ついでに話をしよう。
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作者名:蘭人 x他1人 | 作成日時:2020年4月1日 22時