72.（side_hokuto~ ページ24
side_hokuto
『話がある。新海公園で待っててくれ。』
朝起きて携帯を開くと、表示された1件のメール。
差出人は、田中樹。
正直、今は樹に会いたくなかったけど、
俺も話したいこと…話さなきゃいけないことがある。
｢…行くか｣
まだ重い瞼を上げ、腰を上げた。
どうせ樹に会うだけだから、スウェット姿、
髪もまともにとかないまま出かけた。
新海公園に人影はまだなかった。
呼び出しておいて遅刻とは、
まぁなんとも樹らしい。
｢さみぃ…｣
乾いた風が駆け抜けて、枯葉が舞う。
そびえ立つイチョウの木が、
見事に彩り始めていた。
この景色を、Aと見たかった…
ふと、そんな事を思ってしまう。
ダメだ、もう忘れよう。
Aのことは、Aとの時間は、
なかったことに…
その時、ふと上げた視界の端に気配を感じた。
その方を振り向くと、
｢なん、で…｣
そこにいたのは、Aだった。
目を疑った。
俺は確か、樹と待ち合わせをしてここに…
｢そうか、樹、あいつ…くそっ｣
心の声がつい口からこぼれてしまうほど、
俺はテンパっていた。
俺とAをふたりきりにするなんて…
樹が一体何を考えているのか、見当もつかない。
でも、俺の心はもう決まっている。
｢………帰れ｣
A｢…え？｣
｢言っただろ？…顔も、見たくないって｣
俺は昨日のように、毒を吐く。
Aが早く、俺を嫌ってくれるように…
｢俺ら、もう終わりだ…終わったんだ｣
そう、自分に言い聞かせながら。
Aの目も見ないで、
ひたすら俺の知っている限りの、
酷く残酷でむごい言葉を投げかける。
大丈夫、Aにはもう、樹がいる。
髪の隙間から覗き見える、
首筋に咲く紅が何よりの証拠だ。
だから…
A｢北斗くん…｣
｢…呼ぶな、早く、帰れ｣
呼ばないでくれ、
その声に、自然と涙がこみ上げる。
A｢北斗…くん？｣
｢やめろ…こっち見んな｣
その無垢な瞳が、俺を弱くする。
頬を伝う温かさは、きっと気のせいだ。
A｢ねぇ…｣
｢なんなんだよ！早く、樹んとこ、行けよ！｣
こんな大声、俺には似合わない。
そんなことわかっる…でも、
Aのためなら、俺はなんにだってなる。
Aの幸せのためなら、俺はなんだってする。
俺が最後にAに望むものは…
Aの幸せと、俺との決別だ。
.
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さいか(プロフ) - リリーさん» そんなふうに言っていただけるとすごく嬉しいです(;_;)ぜひまたリクエストがあればよろしくお願いします！ (2019年2月16日 23時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - すごいです！こんなに素敵になると思ってなくて何回も読み返しちゃいました！ありがとうございます！ (2019年2月15日 0時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - リリーさん» リクエストありがとうございます！バレンタインにピッタリのお話が書けて嬉しかったです！！ (2019年2月14日 13時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 樹くんへバレンタインのチョコをプレゼント手作りしてプレゼントするのが読みたいです！お願いします(^ ^) (2019年2月12日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - リリーさん» リクエストありがとうございます！「�� - 雨降る日曜日 - 」にて、樹くんと女の子ちゃんのラブラブ書かせていただきました。ご要望に答えられたか心配ですが…ぜひ、読んでいただけたら嬉しいです！ (2019年2月12日 6時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年11月19日 7時
