74.（side_you~ -end- ページ26
side_you
私は走った。
樹がどこにいるかなんて、わからないけど。
でも、家に帰ればそこに、
樹が当たり前にいるような、そんな気がした。
確証なんてない。
でも、今はただ早く、樹に会いたい。
樹に会って、伝えたいことが山ほどある。
"ありがとう"を、"好き"を…伝えたい。
息も絶え絶え、家に着いた。
｢樹！｣
ベランダにいた樹を目にして、
私はその名を呼ばずにはいられなかった。
樹｢おかえり｣
今まで何度も言われてきたはずの言葉が、
今日は何故か、とても特別な言葉に聞こえる。
私はその声をもっと近くで聞きたくて、
急いで靴を脱ぎ、ベランダへと走って向かう。
｢…ただいま｣
樹は笑って、両手を広げた。
私は迷わず、樹の胸に飛び込む。
樹に抱きしめられるだけで、
私はきっと今、
世界で一番幸せなんじゃないかと思ってしまう。
さっきまで頭の中をいっぱいにしていた伝えたかった言葉は、
胸に溢れる幸せによってかき消されてしまった。
言葉にできない代わりに、
私は腕を樹の背に回し、思いきり抱きしめた。
樹｢俺のこと、好きになってくれませんか？｣
私の首元に生暖かい吐息がじわりと広がる。
｢もう十分、好きですが…｣
樹｢もっとだよ、もっともっと…｣
樹の抱きしめる力が強くなる。
それに私は少しドキッとして、
でもすごく安心した。
私は、樹に愛されていいんだ…
樹を、愛していいんだ…
そう実感した。
｢樹、私今、すごく幸せ｣
樹｢…俺も、幸せすぎて、死にそう｣
可笑しくなって、私たちは体を離して見つめ合って笑った。
そして自然と、私たちの唇は重なった。
少し触れるだけのキスでも、
私の心は幸せすぎて、溶けてしまいそうだった。
樹｢これ、夢じゃないよね…？｣
｢もし夢でも、夢から覚めたとしても…
私はたぶん、樹にキスする｣
樹｢…俺も｣
少し照れながら、私たちはまた、キスをした。
どこかから聞こえる雀の声が、
私たちを祝福しているようだった。
この世界は、残酷だ。
"好き"という気持ちさえ、
時として、私たちを苦しめる。
でも、そんな中にある、小さな幸せ…
たとえば、私にとっての今この瞬間。
それは、信じられないくらいに、
とても、美しい。
私はそんな世界を…
残酷で、美しいこの世界を、
樹と、生きてゆこう。
-end-.
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さいか(プロフ) - リリーさん» そんなふうに言っていただけるとすごく嬉しいです(;_;)ぜひまたリクエストがあればよろしくお願いします！ (2019年2月16日 23時) (
レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - すごいです！こんなに素敵になると思ってなくて何回も読み返しちゃいました！ありがとうございます！ (2019年2月15日 0時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - リリーさん» リクエストありがとうございます！バレンタインにピッタリのお話が書けて嬉しかったです！！ (2019年2月14日 13時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
リリー(プロフ) - 樹くんへバレンタインのチョコをプレゼント手作りしてプレゼントするのが読みたいです！お願いします(^ ^) (2019年2月12日 11時) (レス) id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
さいか(プロフ) - リリーさん» リクエストありがとうございます！「�� - 雨降る日曜日 - 」にて、樹くんと女の子ちゃんのラブラブ書かせていただきました。ご要望に答えられたか心配ですが…ぜひ、読んでいただけたら嬉しいです！ (2019年2月12日 6時) (レス) id: f4b2406715 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年11月19日 7時
