256 天馬の迷い ページ6
ここで前半終了。
前半からの怒涛のせめぎあいに、観客のボルテージも上がっている。後半からはどのように攻めていくか……。
それでもまずはここまでの選手の健闘を讃えるべきだ。私は神童へドリンクとタオルを手渡す。
「凄かったよ、神童。今回は積極的な攻めの姿勢を取ってるんだね」
「ありがとう……そう見えたか？」
しかし神童はちょっと驚いたように眉を上げた。まさか、無自覚だったのだろうか。
「え、うん。いつもよりアツくなってるなって思ったけど」
「そうか。準決勝という舞台に、気持ちが昂っているのかもしれないな」
神童はドリンクを一口含んで、口元を手の甲で拭う。
「新雲は本当に個人間の連携に隙がないんだ。だからチャンスを見つけたらすぐ飛びつかないと突破するのは難しい。でもそうだな。視野が狭くならないよう気をつけるよ──」
「松風。何故手を抜いた」
その時。剣城の低い声に、水分補給をしていた皆の手が止まる。
ベンチに座った天馬の前に剣城が立ち、険しい表情を浮かべていた。
──手を抜いた。確かに前半終了直前、天馬は絶好のチャンスを外してしまったが……剣城はそれを、ただのミスだとは思っていないようだった。
「今雷門で本気を出していないのはお前だけだ──やる気がないならフィールドから出ろ！」
厳しく打ち据えて、剣城は天馬の元から去る。
なんとも言えない空気が流れた。選手たちはそれぞれ顔を見合せて、眉をひそめている。
天馬はまさかこの前の、廃校云々のことを引きずっているのではないだろう。勝ちたいという気持ちは誰よりも強いはずだ。迷いなんてあるはずがない。
それとも、もっと別のことが引っかかっているのだろうか。私は神童に視線で尋ねたが、首を横に振られただけだった。
＊
鬼道監督から後半の作戦を伝えられた。
倉間は影山と交代。デザートスタジアムの流砂は容赦なく選手の体力を奪っていく。温存していた影山を投入することで、一気にディフェンスラインを切り崩すつもりだ。
皆の士気が上がる中、やはり天馬は一人俯き、何かと葛藤しているように見えた。
声をかけようかとも思ったが、短いハーフタイムでは叶わなかった。
向こうはメンバーチェンジなしで挑んでくるようだ。
後半戦の火蓋が切って落とされる。新雲が攻め込もうとするところを、すかさず剣城が躍り出てカットした。
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キメラ(プロフ) - うさまる。さん» コメントありがとうございます！ 更新に波があって、お待たせしてしまって申し訳ないです💦 ゆっくりペースの連載になりますがこれからも見守ってもらえるとありがたいです！ (2022年10月22日 10時) (
レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
うさまる。(プロフ) - 更新ありがとうございます！この作品大好きなのでとても嬉しいです！無理せず更新頑張ってください！ (2022年10月22日 9時) (レス) @page33 id: b10d69f65a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年9月10日 9時
