299 輝くトロフィー ページ49
『神童拓人さんと、AAさんです』
──だから自分たちの名前が呼ばれた時、私は咄嗟に反応できなかった。
盛大な拍手喝采と、他の出演者が笑顔で私たちを見ているのを見て、ようやく身体が動く。
神童と顔を見合わせる。お互い、虚をつかれた顔を。
これは、つまり……観客が、私たちの演奏が一番いいと思ってくれたということ？
拍手に混じって「Aーーーっ！！」という姉の声が聞こえてきた瞬間、私はそれを一気に自覚した。
今までに味わったことのない多幸感が、心臓から手足の指先までもをゆっくりと覆っていく。慌てて観客に向かってお辞儀をすると、神童もそれにならって頭を下げた。
『良かったら今のお気持ちを、一言ずつお願い致します』
司会の人にマイクを差し出されてたじろぐ。どちらが先に言うか、神童としばらく譲り合っていたが、埒が明かないので、成り行きで私が先に話すことになった。
「すごく、嬉しいです。個人的なことにはなるんですが、今回の音楽祭は、私にとってとても大事な節目で……だから今回、このような賞を頂くことができて嬉しいです。ありがとうございます」
緊張しすぎて『嬉しい』を二回言った気がするが、噛まなかっただけでも良しとしよう。
マイクを神童に手渡す。
「彼女とこうして演奏できたことを、そして皆様の心に響く音色を奏でられたことを、とても光栄に思います。そしてこの場を借りて、私たちを支えてくれた全ての人に感謝を──本当に、ありがとうございます」
百点満点の回答だ。場馴れしているというのもあるだろうが、そつなくこんなことができてしまえる神童は、やっぱり凄い。
続いて手渡されたトロフィーは、金・銀・銅のそれよりは一回り小ぶりだったけれど、しっかりと重みがあった。
黒の台座の上に象られた、白銀色のト音記号が、スポットライトの反射を受けて誇らしげに輝いている。
『それでは皆様、本音楽祭の全ての参加者に、もう一度大きな拍手をお願い致します！』
盛大な拍手喝采が、会場全体を揺らした。
はち切れんばかりの喜悦が、いつまでも私たちの心に満ちていた。
＊
会館のロビーには、出演者やその家族、友人たちが多く集まっていた。
私たちも衣装を着たまま、トロフィーを抱えて皆を探す。
天馬たちはすぐに見つかった。ベンチから立ち上がって、まず天馬と信助がこちらに駆け寄ってくる。
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キメラ(プロフ) - うさまる。さん» コメントありがとうございます！ 更新に波があって、お待たせしてしまって申し訳ないです💦 ゆっくりペースの連載になりますがこれからも見守ってもらえるとありがたいです！ (2022年10月22日 10時) (
レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
うさまる。(プロフ) - 更新ありがとうございます！この作品大好きなのでとても嬉しいです！無理せず更新頑張ってください！ (2022年10月22日 9時) (レス) @page33 id: b10d69f65a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年9月10日 9時
