277 鬨の声 ページ27
整列してスタジアムに入場した両チームを、割れんばかりの拍手と歓声が出迎えた。
今までのスタジアムとは、規模も桁違いだ。フィールドからはゴマ粒のようにしか見えない観客の中から姉を探すのは、さすがに無理だった。
ベンチ前で、一同は円堂監督からの最後のアドバイスを聞く。
「皆。これはサッカーの未来を懸けた戦いだ。これで本当のサッカーが取り戻せるかどうかが決まる。だから思いっきり楽しんでこい！ お前たちのサッカーを！」
「えっ、楽しむ？」
その言葉に、皆はどよめいた。
戦術面なんかの具体的で細かいアドバイスが来るのを予想していたのだろうが……それでもこの激励は、何よりも円堂監督らしいと思えた。
「これは俺たちが昔、久遠監督から言われた言葉だ。
その手で日本一を掴み取るんだ！ ドカンと一発決めてやれ！ お前たちの魂のシュートをな！」
「「──はいっ！！」」
チームに気合いが入る。
その熱が冷めないうちに、車田さんが天馬に向き直った。
「よし、それじゃあ天馬、皆に一発気合いを入れろ！」
急に振られた天馬は慌てふためく。
「えっ、俺がですか？」
「当然だろ、キャプテンなんだしさ」
倉間にもそう言われ、天馬は緊張した面持ちで皆の前に進み出た。
──天馬の上げる
「よし、それじゃあ──」
深く息を吸う。
皆は腰を低くし、拳を突き上げる体勢を取る。
「絶対に優勝しましょーーっ！！」
……皆が派手にずっこけた。
ガチガチに緊張していたのか、裏返り気味の声だった。それもまた、皆の笑いを誘う。私もちょっと吹き出した。
「おいおいなんだよ！」
「だいたい『しましょー』って、締まらねえな」
狩屋と倉間にからかわれ、天馬の頬がちょっぴり赤くなる。
天馬らしい、と言うか。結果的にこれでみんなの緊張も解れただろう。
「す、すみません、それじゃあもう一度行きます！
──絶対優勝するぞーーっ！！」
「「おおーーっ！！」」
今度こそ、全員で拳を突き上げる。
決意を胸に、スターティングメンバーはフィールドに散っていった。
＊
両チームがポジションにつく。
張り詰められた糸のような緊張感と高揚感が、会場全体を支配していた。
これで全ての決着がつく。長かった戦いに、ひとまずの終止符が打たれる。
頑張れ、負けるな、なんとかなる。私の手には早くも汗が滲み始めていた。
そして──運命のキックオフ。
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キメラ(プロフ) - うさまる。さん» コメントありがとうございます！ 更新に波があって、お待たせしてしまって申し訳ないです💦 ゆっくりペースの連載になりますがこれからも見守ってもらえるとありがたいです！ (2022年10月22日 10時) (
レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
うさまる。(プロフ) - 更新ありがとうございます！この作品大好きなのでとても嬉しいです！無理せず更新頑張ってください！ (2022年10月22日 9時) (レス) @page33 id: b10d69f65a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年9月10日 9時
