276 キャプテンの初陣 ページ26
決勝戦の舞台──アマノミカドスタジアムは、超満員の観客で溢れかえっていた。
ホーリーロード開会式で訪れた時と、同じ様相。黄金色の豪奢な作りは外観だけでなく、内装にも及んでいた。ある意味、決勝に相応しい場と言えよう。
雷門にあてられた控え室。着替えを終えた皆は、広々とした室内でそれぞれアップをしていた。
必要な備品を確認している私の横を、葵が通り過ぎる。
その右手に握られている物を見て、私は思わず呼び止めていた。
「それ、私から渡してもいい？」
葵はきょとんとしていたが、すぐに頷いてくれた。
立ち上がり、靴紐を結んでいる人物──天馬の元へ向かう。
「はい、これ」
私は今しがた葵から貰ったものを天満に差し出す。
キャプテンマークだ。軽い素材で作られてはいるものの、それが持つ意味は重い。
「ありがとうございます」
受け取った天馬は真剣な目でそれを見つめている。
肩に力が入っているのを見て、私は少しだけ微笑みながら口を開いた。
「神童も最初、キャプテンに任命された時は、右も左もわからなかったって言ってた」
天馬は驚いたように顔を上げる。
「はじめは上手くいかなかったけど、チームの皆が支えてくれて、少しずつできるようになったって。
誰だって初めから上手くできるわけない。それに天馬は一人じゃないんだから、皆を……仲間を信じて、頼っていいんだよ」
フィールドにいる自分以外の十人、それにベンチのメンバー、観戦に来てくれている人たち、そして──神童。
多くの人が私たちの背を押してくれている。活躍を祈っている。それは時にプレッシャーになるかもしれないけれど、何よりも大きな力になる。
「あとは、キャプテンとしてチームをまとめるのも大事なことだけど……天馬が天馬らしいサッカーをするのが一番じゃないかな」
天馬から吹いた革命の風。色んな人を巻き込んで、ここまで大きくなった。
様々な陰謀が裏で渦巻いている。子供には分からないような複雑な事情もあるだろう。
だけど決勝戦という大舞台、目いっぱい楽しんでほしかった。
「A先輩……」
「なんとかなる、でしょ？」
私がそう言って人差し指を立ててみせると、天馬の顔に今日初めての笑顔が輝いた。
キャプテンマークを握りしめ、大きく頷く。
「──はいっ！」
それはひたすらにサッカーを愛する、純真な少年の笑顔だった。
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キメラ(プロフ) - うさまる。さん» コメントありがとうございます！ 更新に波があって、お待たせしてしまって申し訳ないです💦 ゆっくりペースの連載になりますがこれからも見守ってもらえるとありがたいです！ (2022年10月22日 10時) (
レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
うさまる。(プロフ) - 更新ありがとうございます！この作品大好きなのでとても嬉しいです！無理せず更新頑張ってください！ (2022年10月22日 9時) (レス) @page33 id: b10d69f65a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年9月10日 9時
