55 一人のハンデ ページ5
雷門は十人体制で後半戦に臨んだ──が。
車田さん、天城さん、倉間、速水、浜野の五人はサイドラインぎりぎりの場所に立ち、わかりやすく試合放棄の意志を示している。
そんな異様なフォーメーションのまま、後半戦開始。
剣城がボールを奪い、一人で攻め上がっていく。
ディフェンスラインも易々と突破し、キーパーとの一騎打ち。
「『デスソード』！」
そのままシュート。ネットを揺らすかと思われたが。
キーパーの背後から黒いオーラが出現した──化身だ。
「『機械兵ガレウス』！」
剣城のデスソードが、止められた。
ボールはそのまま、FWへ一直線。そしてなんと、そのFWの背中からも化身が出現する。
「『奇術魔ピューリム』！」
シードが、複数。思わぬ展開に唖然とする。
「『マジシャンズボックス』！」
「『バーニングキャッチ』──ぐああっ！」
必殺技で応戦する三国さんだが、化身シュートの格の違いを見せつけられるようにゴールネットを揺らしてしまう。
2-1。後半開始早々、引き離されてしまった。
膝の上で拳を握りしめる。
歯がゆい。どうして自分はマネージャーなのだろう。どうして出場資格を持っていないのだろう。
自分のプレーはまだ拙いけど、それでもいないよりマシだろう──そう思ってしまう。見ていることしかできないのが、辛い。
雷門ボールで試合再開。
またしても剣城が飛び出した。しかしシード二人がかりでマークされ、なかなか抜け出せない。
そうこうしているうちに他の選手もやってきて、完全に八方塞がりに。
するとサイドから、マークを抜けた神童が躍り出た。
「剣城！ いくらシードのお前でも、一人で十一人を相手にするのは無理だ！ 本当に勝ちたいのなら、俺たちと連携しろ！」
襲いかかるスライディング。
剣城は──それをギリギリでかわし、神童にパス。プレーが繋がったことに、ペンチの雰囲気は明るくなる。
ボールはそのまま天馬へ。だが。
「「『エレファントプレス』！」」
ディフェンス技で防がれてしまう。
試合の流れが変わった。攻めに転じた万能坂が、続々と上がってくる。
防ぎきれない。人数が足りず、カバーしきれない。倉間たちは依然として動かないまま。
あっという間にFWにボールが繋がる。
「『バウンドフレイム』！」
「『バーニングキャッチ』！」
ボールはゴールポストに当たり、跳ね返る。
そこからはシュートの嵐。三国さんはどうにか、全てを弾いていく。
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月15日 9時
