465 決戦前夜 ページ8
その日の夜。
私は拠点の裏手にしゃがみ込んで、一人空を見上げていた。今日は曇っているから、星は少ししか見えない。
試合まで一日を切った。命運を分ける勝負の火蓋が切って落とされる瞬間が刻一刻と迫っているのを感じて、身体に力が入る。
ふと、草を踏み分ける音が聞こえてきて、視線をそちらに向ける。
「不安か？」
神童だった。
私が曖昧に笑って言葉を濁すと、神童は私の隣に腰を下ろした。そうして空を見上げる。
風が雲を押し流し、月が顔を出した。周囲の風景が薄ぼんやりと青白く照らされる。
「アームド、成功させられなかったなって。今のままであいつらに対できるかどうか……」
特殊な訓練を受けたプロトコルオメガの選手たち。特にキャプテンであるベータの圧倒的なパワーに競り勝つことができるのか。
負けられないとはわかっていても、勝てるビジョンが上手く想像できなかった。
「弱気になっちゃ駄目だ」
神童の力強い言葉に、ハッとする。神童の瞳に、迷いや不安の色は一切なかった。
「藤吉郎さんも言っていたじゃないか、戦に必要なら一晩で城を作るくらいの気概がなきゃいけないって。俺たちも、試合中にアームドを成功させるくらいの気持ちで臨むんだ」
一夜で城を築くように。太助たちがやってみせたように。
そうだ、自分の心に陰りがあっちゃいけない。私が不安になっていたら、きっとクロエにもそれが伝わってしまう。
私は気持ちを切り替えて頷いた。
「勝とう。絶対に」
神童の拳が目の前に突き出される。私はそれに自分の拳を合わせた。
サッカーを、雷門イレブンのみんなを取り戻すために。譲れないもののために、勝たなければいけない。
決意を胸にした私たちを、満月の光が優しく照らし出していた。
＊
うつけ祭り当日。
夜の帳を切り裂くように提灯の明かりが連なっている。屋台や観客の数も、花見の宴とは比べ物にならないくらい多い。
この試合は表向きには信長勢VS今川勢の蹴鞠戦……ということになっているので、客席も設けられていた。
信長と今川も試合の行方を見守るため、特別に設えられた席についていた。
アップを終えた私は、フィールドを見据える。
雌雄が決する運命の一戦。奪われたままではいられない。必ず勝って、取り戻してみせる。
「行こう、クロエ」
「うん」
クロエは決然的に頷いて、私の中に入った。
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
