502 翳る空 ページ45
「みなさん、今すぐ総攻撃をかけましょう！ オルレアンに援軍が来たのを見て、イングランドの兵は浮足立っています。敵を叩くなら今です！」
勢いに乗って、一気に攻撃を仕掛けるのだろう。先手必勝という言葉もある。ジャンヌの策は正確なもののように思えた。
しかし、盛り上がりかけた士気に水を差す人物があった。
「総攻撃は時期尚早だ」
「まずは旅の疲れを癒すのが先だろう」
ライールとジルドレだ。二人は前に出て、ジャンヌに威圧的な視線を向ける。
「でも、オルレアンの士気が高まっているうちに戦わなくちゃ──」
「それも神のお告げか？」
ジルドレに詰め寄られたジャンヌは言葉に詰まる。
私はその高圧的な物言いに怒りを覚えた。神のお告げでなかったら進軍しないというのか。ジャンヌ自身の言葉には耳を貸さないつもりか。
「戦は我ら騎士に任せておけ」という言葉を残し、二人は去っていった。
そうしてその場の雰囲気はなあなあになり、結局進軍の準備はされなかった。
＊
鎧を脱ぐと、一気に体が軽くなった。身体の節々がバキバキになってしまっている。
さすがにこの雰囲気の中でサッカーをするわけにもいかず、私たちは各々休息をとっていた。
仮拠点となった小屋の裏手で、私と神童は壁に背をもたせかけていた。
会話がないまま時間が過ぎる。ふと神童が私の手を握った。私は黙って握り返した。
「正直不安だった。Aやみんなの身に何かあったらと思うと気が気じゃなかった」
私がシノン城への同行メンバーに選ばれたのは、ミキシマックスの可能性を加味してのことだった。
神童はずっと私たちのことを案じてくれたのだ。私の胸にあたたかな気持ちが広がる。
「だけどやり遂げた。出発前にAが宣言した通り、援軍を無事に連れてきた」
「うん。でも、私は何もしてないよ。上手くいったのはジャンヌの強い意志のおかげ」
──そしてそのジャンヌの背中を、霧野が押してくれたから。
私がそう言うと神童は顔を上げた。
「この旅に霧野がいてくれるのは心強い。だけど今の霧野は、何かに悩んでいるように見える」
私は頷く。霧野が悩んでいることについて見当はついたけれど、この場では何も言わなかった。
神童と霧野は小学生の頃からの付き合いだ。結ばれている絆は強い。しかしだからといって、軋轢が何も生まれないわけではない。
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
