497 いざ謁見へ ページ40
フェイの指摘を受け、私の中に不安が生まれた。
物事が全て、私たちの知る歴史の通りに動くわけではないらしい。
「大丈夫だ、ジャンヌ。俺たちがついてる」
霧野がジャンヌに力強くそう言った。
ジャンヌは頷き、小さな十字架のペンダントを手に持って祈りを捧げる。
「神よ、私に勇気を……」
私はしばしの間、隣にいる霧野の横顔を見つめていた。
＊
馬車で揺られること数時間。
お尻の痛みに耐えられなくなった頃、私たちはシノン城に到着した。
しかしすぐ王に謁見することは許されず、中庭のような場所で待機させられる。周囲には幾人もの兵士が配置されていた。
「私、疑われているんですね……」
不安げな表情で周囲を見回すジャンヌ。その鎧をつついたのは、外に出てきたクロエだった。
「神のこえをきいたのはジャンヌだけなんでしょ。ジャンヌにしかできないから、ジャンヌがここに来たんでしょ。だったらだいじょうぶ」
その場の全員が目をぱちくりと瞬かせた。
クロエの言葉には真っ直ぐで裏表がなかった。だからこそジャンヌの心に届いたのかもしれない。眼鏡の奥の瞳に安堵の色が広がった。
「クロエさん……」
「クロエの言う通り。ジャンヌダルクはフランスを救う──それが正しい歴史さ」
フェイの言葉に私たちは頷く。
ジャンヌはフランスの英雄になる。英雄になって、そして──
最期は。
私は頭の中に浮かびかけたイメージを振り払った。これは今考えるべきことではない。
しばらくすると王の従者と思しき男性が城の中から出てきた。シャルル王太子がお呼びだという。
よかった、門前払いは食らわずに済んだようだ。私たちは歩きだしたジャンヌの後へ着いていこうとしたが。
「お前たちはここで待っていろ」
そう言って行く手を阻まれてしまう。
ジャンヌと、そして私たちの間にも不安が広がった。自分たちも中に入れると当たり前のように思っていただけに。
しかし、そこで男性に食い下がったのは霧野。
「俺も従者として従います！」
男性は少し渋っていたが、霧野の真剣な表情に押されたのか、「一人だけなら、まあよかろう」と、同行を許した。
「ジャンヌさん、がんばやんね！」
「ふぁいと」
黄名子とクロエの声援を背に、霧野とジャンヌが城の中に入っていく。
私たちは事が上手く運ぶよう祈りながら、二人の背中を見送った。
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
