496 馬車での道のり ページ39
「A」
援軍要請の詳しい段取りについての話し合いが終わった時、神童の手がそっと肩に置かれる。
「もし何かあった時には、自分たちの命を守ることを最優先に行動してくれ」
真剣な表情がそこにあった。
神童の手に自分の手を重ね、私は頷く。
「絶対、援軍を連れて戻ってくるから」
それが私たちの使命だ。ジャンヌの力となり、ジャンヌの力を借りる。
そうして時空最強イレブンのパワーを手に入れるために。
＊
翌朝。
私たちはジャンヌに手伝ってもらいながら、苦労して鎧を着た。表面上は護衛騎士ということになっているので、着ないわけにはいかないらしい。
胸当、肩当、籠手、鉄靴……全て装着すると、当然ながらずしりとした重みが身体にかかってきた。ちっとも思うように動けない。
四苦八苦する私たちの様子を、クロエは壁にもたれながら眺めていた。馬車の道中は私の中に入ることになったため──定員オーバーだからだ──鎧は着ないことになった。
壁に立てかけられていた剣を手に取り──想像以上の重さに、身体がよろめいた。そばに居たフェイが咄嗟に支えてくれたから転ばずに済んだものの、これを帯刀して歩ける気はしない。
「よくこんな物が振り回せますね」
霧野の身支度を手伝っていたジャンヌにそう言うと、「実は私も上手く使えないんです」という返事が返ってきた。
「それでも、必要な時は剣を抜かなくてはいけません。どんなに恐ろしくても……」
手の中の剣が、ずしりと重みを増した気がした。道中、剣を抜かずに済むように切に祈った。
朝靄が立ち込める中、私たちはシャルル王子の居城であるシノン城へ向けて出発した。ジャンヌは勇気の兜を荷台に積み込んでいた。
座席にクッションなんてものはない。道は整備されていないから、車輪が石を踏む度に揺れがダイレクトに伝わる。正直めちゃくちゃキツいけど、文句を言うわけにはいかない。
馬車は戦争の跡地に差し掛かった。破壊された建物の残骸があちこちに転がっていて生々しい。その風景をじっと見つめていたジャンヌが口を開く。
「神は私にフランスを救えと命じられました。だけど……」
「その話をシャルル王子が信じてくれるかが問題だな」
剣城の言葉に、私は思わず小声で口を挟む。
「でも歴史では、ジャンヌは王子に会えるはずじゃあ……」
「歴史は不安定になってる。門前払いを食らう可能性も十分あるね」
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
