495 敵中横断 ページ38
その沈黙を破ったのは霧野だった。椅子から立ち上がり、確固たる口調で言う。
「俺たちはジャンヌの力を必要としている。だったら俺たちもジャンヌを助けるべきだ」
それに反論する人はいなかった。
怖くないと言えばもちろん嘘になる。だけどジャンヌの力になれるなら、みんなと一緒なら……なんとかなる。そう思った。
「ほいじゃあ、みんなで行くぜよ！」
「鎧とか着るんですよね？」
「それそれ！ 着てみたいっしょ！」
「あ、あの、馬車に乗れるのは八人までなんです。だから一緒に行くのは七人ということに……」
ジャンヌの言葉に、浮き足立っていた錦たちは落胆した。
ジャンヌと共に行くメンバーは、天馬、剣城、信助、フェイ、霧野、黄名子、私になった。そうなると悩むのが──
「わたしもいく」
クロエの存在だった。テーブルの上に身を乗り出し、目を爛々と輝かせている。
行きたいとせがむクロエの姿が、サッカー記念博物館の時の姿と重なった。あの時もごねて、結局連れていったのだが。
だけど今回は本当に命の危機にさらされることになる。
「クロエはお留守番。ここで待ってて」
私の言葉に、クロエは『なんでそんな酷いことを言うんだ』という視線を向けてきた。
だけどここはどうしても譲れない。クロエを危険な目に遭わせないため、心を鬼にしなければ。
「あぶなかったら中に入ったらいいんでしょ」
「いやそういう問題じゃなくて。何かあった時、クロエを守りきれるか分からないの。馬車だってしんどいだろうし……」
「がまんするもん。もんく言わないもん」
「でも──」
「あの、敵中横断と言っても、戦いの中を突っ切るわけではないんです。危険は恐らく少ないとは思うので、その……」
私たちの会話にジャンヌが割って入った。その表情を見て私は思い至る。
──ジャンヌは、クロエに着いてきてほしいんだ。
ジャンヌはクロエのことを、何かしら奇跡を起こす存在だと思っているのかもしれない。先程『クロエは天使ではない』と説明したとはいえ。
それに……ミキシマックスを成功させるためには、相手のことを知ることが重要。クロエを通してジャンヌのことを知れたら、あるいは。いや、でも……。
私は頭を抱えて散々悩んだ。そして、
「はあ……わかった」
承諾した。クロエの顔にこれでもかというほどの満面の笑みが広がった。
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
