494 護衛騎士 ページ37
「怖いのか？ 戦いが……」
霧野の静かな問いかけに、ジャンヌは静かに頷く。
「それなのになぜみんなを導く？」
「神の声を聞いたから……」
オルレアンを守り、フランスを救え──ジャンヌの前に姿を現した神は、そう言ったのだという。
「きっと他の兵士も、私の言うことを疑っていると思います。でも本当なんです──私は神の導き手だと告げられたんです！」
膝の上に乗せられたジャンヌの手は震えていた。
神や天使といった存在と縁遠い私たちにとって、彼女の考え方を本当の意味で理解することはできない。だけどジャンヌにとって神の声は全てであり、原動力なのだ。
「私はどんなに怖くても、進まなければならないのです……！」
痛切なジャンヌの声は、私たちの心に小さな影を落とした。
クロエも場の雰囲気を察したのか、唇をぎゅっと引き結んでジャンヌの顔を見つめていた。
＊
その日の夕方。用意された部屋で休んでいると、突然扉がノックされた。
応対した葵が、ちょっと驚いた素振りを見せる。そこにいたのはジャンヌだった。
ランプが部屋をオレンジ色に浮かび上がらせる。ジャンヌはみんなの前に立って、話し始めた。
「私は明日、シャルル王子に援軍を頼まなければなりません。イングランド軍に包囲されたオルレアンの町を解放するために」
オルレアンといえば、ジャンヌダルクゆかりの地として真っ先に名の挙がる場所だ。
何故そんな、軍事機密ともいえることを私たちに話したのだろう──そう思っていたが、ジャンヌが次に発した言葉に、私たちは言葉を失う。
「それで、あの……一緒に来てくれませんか。護衛として」
護衛。
私たちは兵士の訓練など微塵も受けたことがない、ごく普通の一般人だ。そんな人間に、護衛を頼むなんて……。
「お話を伺う限り、貴方たちのサッカーの戦術が敵中横断の役に立つはずです」
「敵中横断って、そんなの危険だろ！」
水鳥の言葉はもっともだった。本当に敵に襲われでもしたら終わりだ。私たちはサッカーボールの扱いに長けてはいても、剣はからきしなのだから。
しかしジャンヌの瞳は真剣だった。
「援軍を連れ帰り、オルレアンが無事に解放されれば──私は貴方たちのために力を尽くしましょう」
──交換条件、というわけか。
場には沈黙が流れた。おいそれと承諾できるような話ではない。フランスの歴史、そしてジャンヌの名誉がかかった任務なのだ。
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
