477 天下の夢 ページ20
それから、私たちは信長の城に呼ばれた。
今川との戦いに勝ったということで、ご馳走が振る舞われる。白米と味噌汁と煮物におひたし、そしてお勝さんのお豆腐。
つやつやの白米を食べるのは本当に久しぶりで、どんどん箸が進んだ。
食事には信長の家臣も同席していてちょっと緊張したけれど、クロエはそんなのお構い無しでもりもりと食べ進めていた。
一番上座の席に座っていた信長がふと口を開く。
「それにしても、儂に天下が取れぬと言い切るなど──神童拓人、貴様も大胆不敵な男よ」
クロエを除いたみんなの食事の手が止まる。
信長は多分、私たちが未来から来たということを信じてくれている。『天下は取れない』と、神童が包み隠さず事実を伝えたから。
「最後に一つだけ聞かせてほしい。歴史は変えられるのか？」
天下が取れないということを知り、何か行動を起こしたとして……未来を変えることはできるのか。
私は信長の後ろに目を向けてハッとする。そこにあるのは私たちがアーティファクトとして手に入れた刀に違いなかった。
「俺には……わかりません」
「わからぬ、か。天下は儂の夢──儂はその夢を失うことになるのか」
達観したような信長の口調に、神童が勢いよく顔を上げた。
「でも信長様は大きく時代を動かした……いえ、動かすお方です。信長様には、人の運命ですら変える力があるのかもしれません」
戦乱の世に多大な影響を及ぼした人物──織田信長。
その功績は数百年後の後世まで語り継がれている。多くの人の運命に、日本の運命に変化を及ぼした人物として。
信長は口元に薄く笑みを浮かべて立ち上がる。そして私たちの顔を順々に見回しながら、力強く言った。
「天下の夢──しばし見るとしよう。貴様たちの決して最後まで諦めぬ姿、しかと見せてもらった！」
こうして私たちの戦国時代の旅は、幕を下ろした。
＊
翌朝。
お別れの時がやってきた。出会いがあれば別れもある。生きる時代の違う私たちは、もう二度と会うことはない。
私とお勝さんはみんなから少し離れたところ……大きな枝垂桜の下で向かい合っていた。
「本当にありがとうございました」
私はそう言って頭を下げる。私たちの力になってくれたことは、感謝してもしきれなかった。
一緒にサッカーをしたこと、星を見上げたこと、二人で神童のことについて語らったこと……色んな思い出が私の頭を駆け巡る。
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
