474 静と動 ページ17
「案ずるな、娘」
信長がお勝さんに言って、神童に向き直る。その顔から怒りは消えていた。
「なぜ貴様は動く必要のないところで動く？ 貴様は動きすぎじゃ──静と動の使い分けこそ、戦術の極意！」
神童の眼前に、扇が突きつけられる。静と動……そのフレーズに私はハッとした。
「貴様の役割は攻めと守りの間で要を担うことではないのか。貴様のしていることは誤りではないが、敵に読まれやすいのだ」
──そんなことまでわかるというのか、サッカーの試合は、今初めて見たはずなのに。
人を見抜き大局を見抜く、静と動を併せ持つ「真実のゲームメーカー」。信長の持つその力は本物ということか。
「しかと承りました！」
フィールドに背を向けている神童の表情は窺い知れない。だけど自分が何をするべきかは掴めたようだった。
それから藤吉郎さんは私たちを集め、これからについての指示を出した。曰く──神童はボールに触れるな、と。
「この勝負、試合に勝つだけでは足らんことはわかっておる。だからこそボールには触れるな。時が来るまではな」
時が来るまで。その『時』を作るのが、私たちの役目になるだろう。
試合再開。私たちは燃え盛る炎の如く、敵陣に攻め込んだ。
プロトコルオメガも一歩も譲らず、激しい戦いが続く。
天馬がパスを受け取った私だったが、しかしそこで四方を塞がれてしまった。
シュートコースも断たれた。進退窮まったかと思われたその時──視界の端、左側からフリーの神童が上がって来るのが見えた。
──今だ！
誰からの視線も向けられておらず、完全にノーマークだった神童にパスが通る。
そこに敵のDFが走り込んできた。神童はドリブルからピタリと立ち止まって相手の意表を突き、抜き去る。
戦術の極意……静と動の使い分けだ。
そして、その瞬間は訪れた。
「『奏者マエストロ』──《アームド》！！」
神童の化身が鎧へと変化していく。それは指揮者のような、優美な姿だった。
「やった！」という歓喜の叫びが、私の口から飛び出た。
ゴール目掛け、猛烈なシュートが放たれる。
「『キーパーコマンド03』──ぐわあっ！」
キーパーを弾き飛ばし、ネットが揺れた。
2-2。同点に追いつけた。あと一点だ。
「神童！」
鎧を霧散させた神童の元に駆け寄る。神童は顎を伝った汗を拭い、手を上げる。
私たちのハイタッチの音が、夜空に高くこだました。
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
