473 信長の苛立ち ページ16
焦燥──その二文字が、今の神童のプレーに相応しい二文字と言えた。
奪われたボールを必死の形相で追いかけ、取り返したと思ったら私たちにパスを出すことなく敵陣深くまで切り込んでいく。
「神童、あんまり深追いしたら──！」
そこまで言いかけて、私ははたと思い至る。
もしかして、信長のオーラを受け取るためにいつもより焦っているのではないか。
しかしフォーメーションが崩れたらこちら側に隙が生まれてしまう。
さっき化身アームドを成功させたせいだろうか、私には二人がかりでマークがつけられてしまって、思うように動けない。
神童はそれからも何度かアームドを試みたが、全て失敗に終わった。
私たちは攻めに転じることができない。試合終了の時間は刻一刻と迫ってくる。先ほどのカウンター攻撃は、多分もう通用しない。一体どうすれば。
ボールがタッチラインの外に出て、束の間プレーが止まったその時。
「神童拓人、これへ参れ！」
フィールドの外から怒鳴り込んでくる声があった。反射的にそちらを見て、私は目を剥く。
そこにいたのは鬼の形相をした信長だった。
予想だにしていなかった展開にフィールド内の選手、そして観客たちの間にも驚きの波が広がる。私自身も、ひりついた緊張を感じていた。
神童は信長の前へ歩いていく。信長の朗々とした声が、風に乗って聞こえてきた。
「貴様の戦ぶりはなんじゃ！ 我が方が押されておるのは貴様のせいじゃ！ このまま軍勢の足を引っ張るなら、控えに下がるがよい！」
あまりの剣幕に、びくりと肩が震えた。
信長は完全に立腹している。織田軍の頭である信長が神童の出場を認めないのなら、神童は本当にベンチに下げられてしまう。
神童は顔を俯けさせた。なんとかして取りなさないといけない。でもどうやって……。
「──お願いでございます！ 拓人様に試合を続けさせてあげてください！」
その時。第三の闖入者の声が私たちの耳に届いた。その人物は自分の足袋や服が汚れるのも構わず、信長の前に土下座する。
……お勝さんだった。
「娘！ 無礼であるぞ！」
家臣に諫められたが、お勝さんは怯まない。
「拓人様は一生懸命サッカーの修練に励んでおいでです。勝つために昼も夜も……！ だから拓人様に試合を続けさせてあげてくださいませ！」
信長を見つめる、その真摯な表情。それはそのまま、お勝さんの神童への思いの現れのように見えた。
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
