458 夕餉の団欒 ページ1
その晩。私たちは拠点で、お勝さんが作った湯豆腐をご馳走になった。
鍋を開けると、お豆腐のいい香りがふわっと広がる。昆布だしがよくきいていて、素朴ながらも味わい深い一品だった。
「すみません、こんなことまでしてもらって」
神童の言葉に、お勝さんは「いえ……」とだけ小さく漏らす。私はその瞳の中に曇りを見て、そっと俯いた。
お勝さんはさっきの詮議で、私たちが未来から来たということを知った。そうして同時に、自分の恋が叶わぬものだということも知ったのだろう。
「たくさん食べてくださいね。お豆腐ならいくらでもありますから」
明るくそう振る舞う姿に、私は胸を締め付けられた。
お豆腐はもちろん美味しかった。ほどよい食感と旨味がマッチして、どんどん箸が進む。
クロエはあまりの美味しさに、熱い豆腐を口いっぱいに入れてはふはふとしていた。
そのうち、話題は今日の詮議でのことになった。
「それにしても、天下が取れないって答えたときはびっくりしたぜよ！」
「まさか本当のことを言うとは思わなかったな」
錦と水鳥が、昼間の神童の言動を振り返ってそう言う。
「小手先の嘘が通じる相手ではないからな」
実際、神童の言うとおりだった。私や他のみんなが同じことを言ったとしても、きっと駄目だっただろう。
神童だからこそ、真摯な言葉が信長に届いた。そういった意味で神童は、信長のオーラを受け取る器を順調に育てられつつあると言えるかもしれない。
「そうだ。天馬たちが先の世から来たって、あの話は本当なの？」
太助がふと発した疑問に、私たちは言葉に詰まった。
「太助……」と、横からお勝さんが制しかけたけど、太助は興味津々といった様子で身を乗り出す。
「だって気になるよ。今日のあの役人だって、白鹿組の時にいた奴でしょ？ 今川の家臣とかいう奴らも関係あるの？」
私たちは顔を見合わせた。事実を伝えるべきかどうか。
太助は白鹿組の時に一緒に戦ってくれた。だから事情を打ち明けても問題はない気がする。逆にここまで巻き込んでおいて真実を隠すのは筋が通っていない気がした。
フェイも私と同じ気持ちだったのか、神妙な面持ちで頷いた。
「話しておいた方がいいかもしれないね。恐らくプロトコルオメガとの一戦は、白鹿戦とは比べ物にならないくらい激しいものになる」
激しいもの──それこそ歴史を揺るがしかねないような、大きな出来事になりうるということだ。
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キメラ(プロフ) - こーらふろーとさん» ありがとうございます！主人公の成長は力を入れて表現したところなのでそう言っていただけて嬉しいです！長い物語にはなりますがこれからも見ていただけたら嬉しいです😊 (2023年3月18日 12時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
こーらふろーと(プロフ) - 初コメ失礼します！原作の良さを残しつつ、夢主の成長を描くこの作品に惹かれて、一気見してしまいました。これからも応援しています！ (2023年3月17日 12時) (レス) id: 636f6efcc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年1月21日 14時
