345 新たな力 ページ38
「改めてお聞きしちゃいますが、本当に私たちと勝負しちゃいますか？」
雷門イレブンと対峙していた日本代表──いや、プロトコルオメガのキャプテンが口を開く。私たちと同い年ほどの女の子だった。
「当たり前だ──絶対に勝つ！」
「やってみるまでもないと思いますけど……まあ、いいでしょう」
上空を漂っていたスフィアデバイスが降りてくる。キャプテンがそれに手をかざすと、相手チームの服が一瞬にして近未来的な黒のユニフォームに変わった。
両チームがポジションにつく。洗脳のためか、私たちがアメリカ代表と成り代わることは難しくなかった。フェイも雷門のユニフォームを着てチームに加わっている。
この試合、何としても勝たなければ、サッカーの未来はない。ホーリーロードで味わったものとはまた別の緊張がチームを支配していた。
雷門チームのキックオフで試合開始。前半戦なかばの今の時点で得点は0-8で日本代表──プロトコルオメガが大量得点を決めている。
パスを受けた剣城が敵陣に切り込んでいく。すると次の瞬間……向かってきていた相手選手がすれ違いざま、剣城にラリアットをしかけたのだ。
剣城はもんどりうって後方に倒れる。私は息を呑んだ。清々しいほど堂々としたラフプレーだった。
ボールを奪った選手はそのまま攻めてきた。しかしそこに天馬が追いすがる。
「『ワンダートラップ』！」
そして新しい必殺技で見事ボールを取り返した。
そのまま神童、フェイ、ノーマークの錦へと繋がる。
「『戦国武神ムサシ』──『武神連斬』！」
会心の一撃。決まった──そんな私たちの希望はいとも簡単に打ち砕かれる。
相手キーパーはそれを必殺技なしに、己の身体一つで受け止めてしまったのだ。その顔には汗一つ浮いていない。
──化身シュートが、効かないなんて。
そこからプロトコルオメガの逆襲が始まる。鮮やかなパス回し……目で追うのがやっとなくらいだった。
あっという間にディフェンスラインが突破される。そこに躍り込んできたのは、ベータと呼ばれた相手キャプテンだった。
「来い！──『虚空の女神アテナ』！」
口調が一変したベータの背中から、女型の化身が現れる。赤と青の二丁拳銃を構えたその化身は、冷たい瞳でフィールドを睥睨していた。
「《アームド》！」
ベータがそう叫んだ瞬間。化身が霧散する──いや、無数の光の束となってベータに降り注ぐ。光が晴れたベータは、鎧を纏った姿に変化していた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年11月2日 10時
