356 固まる決意 ページ49
「ま、頑張るんじゃな」と言い置いて、博士は去っていった。私たちに全面的な協力をするつもりはないようだった。
場に沈黙が降りる。沈みゆく夕日の光が私たちの顔をもろに照り付けていた。
「奴らを倒せるチームを作るしかない」
いの一番にそう言ったのは天馬だった。
「俺たちの監督、俺たちの仲間、俺たちのサッカーを取り戻すには……それしかないよ！ 今よりも強くなって、化身アームドの力も手に入れて、必ずプロトコルオメガを倒してみせる！」
そう……天馬の言う通りだ。
ここで弱気になっちゃだめだ。十回練習してもダメだったら百回練習すればいい。そうして力をつけないといけない。
「確かに、化身アームドの力があればなんとかなるかもしれんのう！」
化身を身に纏うことができれば、戦力はいまよりも数段アップするだろう。
それに多分……私の中にも、今化身が生まれつつあるのだ。みんなの力になれるかもしれない。
──私も、フィールドで。選手として。
「時空を超えたって、歴史がおかしくなったって……強くなるための方法はきっと一つしかない。特訓だ！ 円堂監督ならきっとそう言うよ！」
天馬の言葉に全員が同意する。特訓なくして力は手に入らない。
話がまとまったタイミングを見て、私は一歩前に進み出て言った。
「私も戦わせてほしい」
不思議とそう言うのに、迷いも恐れもなかった。サッカーを取り戻す──その強い思いだけが、胸の中を満たしていた。
「さっきの試合は勢いで出ちゃったようなものだったけど……今は、みんなの力になりたいってはっきり思う。天馬たちと比べたら私はまだまだ未熟だけど、サッカーを取り戻したいっていう気持ちは同じだから」
天馬はじっと私を見つめていたが、ややあって強く頷いてくれた。
「わかりました。一緒に戦いましょう！」
誰からも反対の声は出なかった。みんなの顔を見回し、最後に神童に向かって強く頷いてみせる。
戦力になりたい。いや、なってみせる。
ユニフォームの左胸にある稲妻のエンブレムが、私の心に呼応するように煌めいた気がした。
＊
ひとまず今日のところは解散となり、私はいつものように神童と帰路を共にした。
色んなことが一気に起こりすぎて、眩暈がしそうだった。これでも時間にしてみれば数時間しか経っていないのだから驚きだ。
さしあたって気になるのは、試合中に二度聞こえてきた声のことだった。
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年11月2日 10時
