302 奏でる悦び ページ2
五十嵐先生の言葉に頷き、鈴木先生が一歩前に出てくる。
「舞台の上で音を奏でている貴方たちが、他の誰よりも輝いて見えた。あんなに真っすぐで心のこもったアンサンブルを聞いたのは初めてで……Aさんの音も、最後に聞いた時よりぐっと深みが出ていて、元講師として嬉しくなったわ。素敵な演奏を聞かせてくれて、どうもありがとう」
優しい声音の言葉を聞き、私はハッとする。小さな気づきが頭から全身をゆっくりと巡っていった。
五十嵐先生も鈴木先生も、私たちの演奏に感動してくれた。多分、この場にいる誰よりも。それは私たちの近くで、成長をずっと見てくれていたからだ。
そう感じると、私は考えるより先に、二人に向かって頭を下げていた。
「お礼を言うのは、こっちです。五十嵐先生、鈴木先生──ありがとうございました」
突然感謝の言葉を述べられて、二人が少し驚いたのが空気でわかる。
がばっと顔を上げると、私は上気した頬をそのままに口を動かす。
「鈴木先生は、一番初めに私に音楽の楽しさを教えてくれて……ずっと親身に寄り添ってくれていました。五年前突然先生の前から去ったにも関わらず、私のことを気にかけてくださって──その優しい心遣いが、すごく嬉しかったです。
五十嵐先生は、五年もブランクのある私に、根気強く指導してくれて……おかげで音色を奏でることの良さを思い出せました。それに音楽以外のことにも、いろいろと相談に乗ってもらったり……本当に、感謝してもしきれないです」
二人は顔を見合わせ、そして同時に照れくさそうに笑った。
「ありがとう。Aさんがこれからも楽しくバイオリンを弾いてくれたら、それが僕らにとっての一番の恩返しになるよ」
「──はい！」
心のままに奏でる。
自分の将来──ずっと先のことはまだわからない。バイオリンを弾き続けてプロを目指すのか、それとも講師になるのか。はたまたサッカーの道に進むのか。
だけど、まず自分が音楽を、サッカーを愛すること。そうやって過ごしていけば、おのずと道は開けていくんじゃないか。そう感じた。
向こうに目を向けると、天馬が神童にトロフィーを持たせてもらっているところだった。
「ホーリーロードのと同じくらい重いです！」とはしゃぐ天馬。「次僕に持たせて！」とジャンプする信助。「落とすなよ」と短く注意する剣城。
そんな後輩の様子を一歩離れたところから見守る霧野。私たちの演奏のことについて語らっている葵と茜。
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キメラ(プロフ) - 彼方さん» こちらこそ作品を読んでいただいてありがとうございます！主人公の家族については個人的に力を入れて書いた部分でもあるので、そこを褒めていただけて嬉しいです🥲これ以降続くCS編も話数は多くなるかと思いますがまた見ていただけたら嬉しいです！ (2023年1月21日 15時) (
レス) @page4 id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 終始ドキドキで一気読みしちゃいました！お姉さんのキャラが大好きすぎるし、何によりも作者様の文才に脱帽です、、素敵な作品をありがとうございました！ (2023年1月21日 14時) (レス) @page10 id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - わたぐもさん» 作品に触れていただけて嬉しいです🌸 ありがとうございます！ 個人的な話ですが一つの作品を完結まで書き切れたのはこれが初めてなので、自分の中でも思い入れの深い作品になりました！ CS編以降も、お暇なときにでも見ていただけたら嬉しいです！ (2022年10月30日 22時) (レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
わたぐも(プロフ) - 今日読み始めたのですが、昨日完結されたのですね…！お疲れ様でした！無印もGOも昔から大好きなのですが、最近は新たに長編が出てきたり、完結しているものも少なく久しぶりに夢中になりました。感想文字数が足りそうになく…素敵な作品をありがとうございます！ (2022年10月30日 22時) (レス) @page10 id: c10d05a687 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - ひよこ豆さん» ありがとうございます😊 言葉選びは色々考えた部分なので、そこを気に入って頂けて何よりです🍀 CS編以降も鋭意執筆致しますので、また見て貰えたらと思います！ (2022年10月30日 9時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年10月27日 11時
