817 強きが弱きを挫く ページ10
「『太陽神アポロ』──《アームド》！」
顕現した化身が、日の光の色を抱いた鎧へと変化していく。黄名子に続いて太陽も、アームドを成功させた。
そして放たれるシュート。しかしキーパーは眉一つ動かさなかった。
客席から見ていた私たちは息を呑む。
天馬の後ろにいたフェイがその時一瞬にしてゴール前へ駆け、太陽のシュートを止めた。
なんという機動力、パワー。私たちと一緒に戦っていた時より、その力は数段階上がっている。
ガルが反撃に出た。アクロバティックな動きでエルドラドチームを翻弄しながら、一気に上がる。
十秒と経たないうちに、フェイがゴールへと迫っていた。信助との一騎打ち。
「『バウンサーラビット』！」
「『ぶっとびパンチ』！」
その戦いを制したのはフェイだった。
0-1。試合開始から数分、
しかし彼らのサッカーを認めるわけにはいかない。またフェイと一緒に、サッカーをするためにも。
だがそれからも反撃の糸口はつかめない。
相手のスピードが速すぎて、プレーが繋がらないのだ。影山からトーブへのパスを、フェイがカットする。
トーブは立ち塞がったが、フェイはなんの躊躇もなくチャージでその身体を弾き飛ばす。そうして再びシュートを放った。
「《ミキシトランス・劉備》──うわあっ？！」
ゴールが決まる。パワーアップしたフェイは圧倒的な力をもってして、エルドラドチームを突き放した。
この調子で得点を重ねられてしまったら──悲観的になりかけた思考を打ち払う。天馬たちなら大丈夫、なんとかなる。
しかしトーブはさっきの弾みで足を痛めたようだった。霧野たちに心配されて一度は起き上がったものの、痛そうに飛び上がって足首を抑えている。
それを見た天馬はまなじりを決してフェイに詰め寄った。大声がこちらまで聞こえてくる。
「フェイ、さっきのプレーはひどいよ！ あんな危険なプレー、トーブが怪我でもしたら──」
「天馬、まだわからないの？ 僕たちは特別な存在なんだ。だから君たちを淘汰しなきゃならない」
冷ややかな視線が天馬を射抜いている。
力を持つ者が、力を持たない者を屈服させる──それがサッカーという、何よりもかけがえのないものを介して行われていることに、私は果てしない絶望を覚えた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
