850 時空を駆ける嵐 ページ43
──その様は圧巻だった。私たちの旅の集大成が目の前にある。
これが時空最強イレブン、クロノストーム。最初からフルスロットルで挑むのだ。
膝の上で握りしめた私の手に、手が重ねられる。
クロエだった。クロエは真っすぐ前を見据えたまま、手に力を込める。
そう、大丈夫だ。私なら、私たちなら、絶対に負けない。どんな相手にだって勝てるのだ。
──人類の未来を賭けた最終戦争が、始まる。
長いホイッスルの音。
運命の試合の幕が上がった。
ザ・ラグーンからのキックオフ。
SARUからパスを受け取ったFWが上がっていく。真っ先にザナークが向かっていったが、しかし恐るべき速度をもってして一瞬でかわされてしまう。
そのまま中盤で確実にパスを繋ぎ、こちら側に切り込んでくる。フェイが阻止しようとするも追いつかない。ミキシマックス状態の選手を置いてけぼりにするほどの、恐るべし力。
しかしその猛攻を霧野がカットした。
ボールは神童へ。そして向かってきていた相手選手をかわしていく。
「よし、行ける！」
私はぐっと拳を握り締めて言った。
先制点を取って、流れをこちらに引き寄せることができれば──しかしそううまくはいかなかった。
両者一歩も譲らないボールの奪い合い。鬼気迫る接戦に、ギャラリーも興奮の歓声を上げる。
だがこれなら勝てる。最後には思いの強い方が勝つのだ……私たちの意気込みは、生半可なものじゃない。
ボールを持った天馬が飛び出した。得点を狙うべく前線へ切り込んでいく。
しかしその瞬間……一陣の風が吹き、天馬の足元からボールが消えていた。
──いつの間にか自陣へ戻っていたSARUが、目にも止まらぬ速さでカットしたのだ。
「クロノストームだっけ……全員がミキシマックスしてこの程度か。がっかりだね」
冷めた目で言うと、SARUはFWにパスを出した。
ボールを受け取ったその選手は、まるで短距離走をしているかのような爆発的な速さで迫ってくる。
「なんだあのスピード！」
「さっきまでと全然違います……！」
私は水鳥や葵と一緒になって目を剥いた。速度は落ちるどころかどんどん上がっていく。
……まさか、今までのは小手調べだったとでもいうのか！
FWは神童を、そして二人がかりで止めにかかった霧野と黄名子をあっさりと抜いていく。
ボールは再びSARUへ。
「『シェルビットバースト』！」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
