849 亜空間 ページ42
その瞬間──地面が揺れた。
地震か。私たちは咄嗟に身を硬くした。
揺れは長い。ただの自然災害というわけではなさそうだった。
「一体何が……」
クロエの声が途中で消える。その瞳は上空に釘付けになっていた。
その視線の先を負った私も、同じように絶句した。
──空が降りてきている。いや、私たちが浮かんでいるのだ。
スタジアムが地面から離れ、ゆっくりと浮上している。これもきっと
SARUがおもむろに銃のようなものを懐から取り出した。「アンプルガン……！」というフェイの驚愕の声がこちらまで聞こえてくる。
撃鉄が下ろされた。銃口から紫の光が放たれる。
それは上空で一点に収束した後、放射線状に広がり、スタジアム全体を包み込むように広がった。
宙が紫色に覆われる。その異様な光景に、私たちはたじろいだ。
「そうか、ここはワームホールの中だ……！」
ワンダバの言葉が、私たちの意識をフィールドへ引き戻す。
フェイが額に汗を浮かべながら、それに説明を加えた。
「SARUはアンプルガンでワームホールを作って、その中に僕たちをスタジアムごと引きずり込んだんだ！」
私たちは息を呑む。ワームホールと言うと、時空を行き来するときに私たちが通ったあの空間のことだ。
それを自ら作り出し、引き入れるだなんて……そんな芸当もやってしまえるのか。ラグーンの面々の表情はどこか得意げだった。
「残念だったね、おじさんたち……もしそっちがこの試合で負けたら僕たちをガスで眠らせて、ワクチンを打とうとしてたでしょう」
SARUがエルドラドの特別席……そこにいるサカマキさんとトウドウ議長に向かって言った。
私たちの視線も反射的にそちらへ向く。そんなことは一言も説明されていなかった。私たちには負けるつもりもなかったが、だけどそんな、無理やり組み伏せるようなことを。
「だから最後は、誰にも邪魔されない場所でやることにしたよ」
「ふん……最終戦にはうってつけの舞台ってわけか」
ザナークが不敵な笑みで呟く。
これで人類が勝利するには、この試合に勝つしか手はなくなった。だけどこっちは最初からそのつもりだった。ワームホールだろうがどこだろうが、私たちは自分の使命を果たす。
「──いくよ、みんな！ ミキシマックスだ！」
天馬の掛け声で、クロノストームの十一人が一斉にミキシマックス状態に入る。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
