844 感動の再会 ページ37
アルノ博士は必死にキーボードを叩いているものの、止まる気配はない。
嫌な想像が頭を過ぎる。もしこれで石そのものが破損してしまったら……。
その時。台座が割れ、クロノストーンが宙に浮きあがった。
その数秒後──大きな爆発が起こると同時に、猛烈な爆風が私たちの身体を押し包む。
立っていられなくなった私は、後ろにいた誰かの背中にぶつかりながら尻餅をつく。
視覚と聴覚に大きな衝撃を受けてしまった私たちは、しばらく吹き飛ばされたままでいた。
一体何がどうなったのか……恐る恐る目を上げる。
装置からはもうもうと白煙が上がっていた。そして……その向こうに誰かがいる。
煙が晴れて、その姿が露わになる。
白のジャージ、健康的に焼けた肌。そして……オレンジのバンダナ。
「──よっ、みんな！」
その人はそう言って、溌溂とした笑みを見せた。
呆然となりながら立ち上がる。ずっと会いたかった人が、今目の前にいる。
「円堂監督……！」
天馬の呟きを聞いて、私の中にもようやく実感が生まれた。
雷門の太陽ともいえる円堂監督を取り戻すことができた。その生き生きとした笑顔を、もう一度見ることができたのだ。
感極まったみんなは思わず一斉に監督に飛びつきそうになったが慌てて立ち止まり、背筋を正す。
「監督、おかえりなさい！」
「みんな、すまなかったな」
時空の狭間に封印されてしまった円堂監督。
何度戦っても取り戻すことはできなくて、どんどん私たちの手から離れて行ってしまうような感覚もあったけれど。
もう、来るところまで来たのだ。目じりに浮かんできた涙を、私は周りにばれないように指で拭った。
「やった……円堂監督が帰ってきたぞ！」
天馬の声に、全員が沸き立った。
また円堂監督とサッカーができる。その喜びは、いままでの旅の辛さを全て吹き飛ばせてしまうほどのものだった。
「この人が……」
「なんか、すっげー力を感じるぞ」
円堂監督の姿を初めて見るクロエやトーブは、目を見開いて釘付けになっている。
監督の偉業を知る人はもちろん、尊敬の念を抱く。しかし知らない人でも、滲み出るオーラに圧倒されるのだ。
「みんな、ここまでよく頑張ったな」
その労いの言葉は何より心に染みわたっていった。
この喜びを分かち合おうと神童の方を見れば……その瞳もうっすら涙に濡れていたので、私はクロエと顔を見合わせて小さく微笑み合った。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
