833 あまりに高飛車な ページ26
しかしザナークはスフィアデバイスを懐から取り出し、一瞬のうちにいつものユニフォームに着替えた。ワンダバスイッチと同じ理論だろうか。
まさか似合わないって言われたのを気にしたの？ そう口にしたら本気で殴られると思い、口をつぐむ。
代わりに私は渋々ではあったが、さっきの試合での活躍を褒めた。
「まあ、あんたの力は認めるよ、ザナーク。本当に台風とミキシマックスしたとは思わなかったけど……」
「ザナークではなくスーパーザナークだ！ 次言い間違えようもんなら、また顔面にディザスターブレイクを見舞うぞ」
私は反射的に片手でおでこを押さえる。あれを食らうのはもうごめんだ。ていうかどんだけ呼び方にこだわるんだ。本当に小学生か。
でも、向こうがそう来るならこっちも同じように対抗させてもらおう。私はちょっと唇を尖らせながら言う。
「じゃ、私のこと女って呼ぶのやめて。そうしたらスーパーザナークって呼んであげる」
……本当は呼びたくないし呼ばないけど。ザナークに上から目線で来られるのが嫌だった。
ザナークはしばらく視線を宙に投げかけてから、私に問いかけてくる。
「何だった、お前の名前は？」
「A」
「そうか、A──明日の試合では圧倒的な力でお前の度肝を抜いてやる！ せいぜい楽しみにしておけ！」
ザナークが高らかに笑い出したので、私はばれないようそっと距離を置いた。
そこに神童が近寄ってきて、小声で問いかけてくる。
「また何か言われたのか？」
「うん、まあ……ちょっとしたプライドの話っていうか、なんというか」
抽象的すぎる私の答えを受けて、神童は頭の上に疑問符を浮かべたのだった。
＊
それから私たちはフェイの部屋にて──1人用の寝室に二十人以上の人間が出たり入ったりするものだから窮屈で仕方なかったけど──フェイを出迎える準備をした。
ワンダバにクラッカーと垂れ幕用の布、あとペンを用意してもらい、各々作業に取り掛かる。といってもそんなに大がかりなものではないので、人手があぶれた。
手持無沙汰になった私は今のうちに用を足しておこうと思い、みんなに一声かけた。
「ちょっとお手洗い行ってくるね」
「あ、うちも！」
黄名子が手を挙げてついてくる。私たちは連れ立って女子トイレを目指した。
白を基調とした通路を歩き出してしばらく、二人の間に会話はなかった。やっぱりさっき明かされた衝撃の事実が、私の中でまだ尾を引いているのだった。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
