831 ここで待ってる ページ24
「お父さんだって貴方と別れて平気だったんじゃない。ずっと心配してたやんね。だからこそ支援者Xになったり、私のところに頼みにきたりしたやんね。
──貴方は一人ぼっちなんかじゃなかったんよ。ちゃんと貴方のお父さんとお母さんに見守られてたんよ！」
黄名子はずっと、フェイのことを気にかけ、傍についていた。
それは恋愛感情によるものではなく、親子愛が成すものだったのだ。
しかしフェイの表情は曇ったままだった。私たちの顔を見渡してから、叩きつけるように言う。
「今更そんなことを知らされたって、もう後戻りできない──信じてくれたみんなを、僕は裏切ったんだ！ 僕にはもう、フェーダを抜けても行くところはない！」
親に捨てられたと思い込み、居場所を求めてフェーダに加入した。
そして
ラグナロクで記憶がよみがえり、私たちの前に敵として立ち塞がった。
それは見ようによっては、裏切りと言い表すこともできるのかもしれない。しかしそれだけのことで、フェイをもう仲間じゃないと切り捨ててしまえるかと問われれば──答えはもちろん、決まっている。
天馬が数歩前へ出た。そうして力強く頷く。
「あるよ、フェイ！ フェイの帰る場所はここにある！」
フェイの瞳が見開かれた。
そうしてもう一度私たちの顔を見回す。フェイは仲間じゃないと思っている人間など、この場にはいない。
「ここに……？」
「当たり前じゃないか！ 俺たち、これまでずっと一緒にサッカーやってきた仲間だろ？ フェイがサッカーを好きだって言った言葉は、絶対嘘じゃない──だから一緒にサッカーを守ろうとしたんだろ？」
サッカーを守るために時空を超え、敵と戦い、共に過ごしてきた。
その色濃い時間の中で生まれた絆は、そう簡単には解けない。解けさせない。
「フェイの帰る場所はここなんだ。絶対、ここなんだ！」
天馬は自分の拳を胸に当てた。それは何よりも確かな仕草だった。
「天馬の言う通りだ。フェイが誰よりも真剣にサッカーを守ろうとしていたことは、俺たちが知っている」
神童の言葉に全員が頷く。フェイはどこまでもサッカーを愛していて、そしてきっと、サッカーにも愛されていた。
フェイの瞳が揺れた。そうしてゆっくりと顔を伏せる。その瞳の端には、光るものがあった。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
