828 フェイの父 ページ21
「お互い最強メンバーを選出しての戦いだ。フェーダ代表は僕のチーム──ザ・ラグーン！」
ザ・ラグーン……SARUが率いる、正真正銘最強のチーム。
一体どれほどの強さを誇るのか。腹の底から、恐れにも似たものが這い登ってくるようだった。
「試合は明日、ここラグナロクスタジアムで行う。すべての決着をつけよう……楽しみにしているからね！」
SARUは勝気な表情を最後に天馬へ向けて、ステージを降りる。
私は心臓のあたりを服の上からぎゅっと握りしめた。相手がどれだけ強かろうが、どれだけ恐ろしかろうが、立ち向かわないという選択肢はない。勝たなければいけないのだ。
フィールドに視線を戻すと、フェイを抱えた老人が、フィールドから立ち去っていくところだった。
天馬は慌ててその後を追った。私たちは顔を見合わせて頷き、席を立ってスタジアムの裏手へと駆ける。
とにかくあの老人から話を聞かないことには始まらない。フェイを救うためにも。
＊
スタジアム裏の広間。そこのベンチにフェイは寝かされていた。
私たちが追い付いたと同時、老人がフードを脱いで素顔を晒す。そうして顎髭を取った。老人ではなかったのだ。
そこでフェイが目覚める。そのエメラルドグリーンの瞳には、自分と同じ髪色と瞳の色をした、四十代ほどの男性が映っていることだろう。
「貴方は……？」
「私はアスレイ・ルーン。お前の父親だ」
フェイのか細い声に、男性──アスレイさんが答える。
驚愕の波が一同の間を駆け巡った。私たちは絶句して、二人の顔を見比べる。
面影はある。髪色も同じ。だが、よりにもよってこのタイミングで正体を現すなんて。いや、このタイミングだからだろうか。
「父親……？！」
「支援者Xが？！」
ワンダバの言葉に、私はハッとする。
この人物が支援者Xだったのか。姿を見ていないから、それとわからなかった。
「フェイ……本当にお父さんなの？」
天馬の問いに直接答えることはせず、フェイは目を吊り上げて自分の父親を見据えた。そして低い声で問いかける。
「なぜ、ここにいるの」
「お前を見守っていたかったんだ。だから私はフェーダに……」
「今更名乗って、どうなるの？」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
