810 繋がる望み ページ3
「止めたぜ！ ジジイ見たか？ 見たなあ、俺様の力を！」
どうやら、大介さんに己の強さを見せつけるためのプレーだったようだ。
抗議しようとした私だったが、ザナークは目にも止まらぬ速さで走り出す。
ギリスとメイア、そして相手DFを三人、次々に吹き飛ばしていく。数回瞬きする間に、その姿はあっという間にゴール前にあった。
「──俺の力を思い知れ！」
そして渾身のシュートは、キーパーの身体ごとゴールネットに突き刺さる。
ホイッスルが鳴り、会場が沸き立つと……ザナークは腰に手を当て、高らかに笑ったのだった。
ここで試合終了。得点は4-3。
立ち上がろうとした私は、安堵感でもう一度その場にへたりこんでしまった。
前半の展開では、どうなることやらという感じだったが……勝利の女神をどうにか微笑ませることができた。
望みを──剣城たちの思いを、次に繋げることができたのだ。
「A」
神童の右手が差し出される。私はその手を取って立ち上がった。
観客席──天馬や剣城がいる方に軽く手を振れば、みんなは笑顔で手を振り返してくれる。
「一勝一敗……次が本当の最終決戦だね」
「ああ。そこで全てが決する」
私は頷いて天を仰ぐ。
そうして二百年後の空の色も、私たちの時代と全く同じなのだということに今更気が付いた。
会場の大歓声は、それからしばらく止まなかった。
＊
その後、ジャージに着替えた私たち──私と神童とクロエは、広間のベンチで束の間の休息を取った。
ベンチに掛けると同時に、小さな溜息が口から漏れる。それは疲労感と達成感から来る種類のものだった。
「ていうか、神童も無茶言うよね……私をベータのサポートにつけるなんて」
試合を振り返りながら私は、半分冗談、半分本気で神童に言う。
三点目をもぎ取った時──私は死に物狂いで走ってようやっと、ベータに繋げることができたのだった。
「Aだからできると思ったんだ。そうして実際にやり遂げてみせたじゃないか」
神童は真っすぐな瞳でそう言った。
一点をもぎ取る懸け橋になれると──私のことを信じてくれていたのだ。そのことがどうしようもなく嬉しくて、口元が緩むのを抑えるのに苦労した。
「神童先輩、A先輩！ やりましたね！」
そこに天馬がやってきて、ガッツポーズを作った。
神童とクロエが笑顔でそれに応える。
「ああ。みんなの希望を繋ぐことができた」
「次は天馬の番だね。応援してるよ」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
