826 機械の身体 ページ19
フェイとエルドラドゴールの距離がどんどん縮まっていく。信助は頭を抑えていて動けないでいる。
──だめだ、このままでは点を奪われる！
しかし。ただ一人、ガルに立ち向かう選手がいた。真顔で敵を見据え、走り出していく。
それはレイ・ルクだった。倒れるどころか、汗一つかかないでプレーを続けている。一体なぜ……。
「そうか、レイ・ルクはアンドロイドだから……！」
念動波が効かない。
神童の言葉の先を頭の中で補った私は、汗の滲んだ手のひらをぐっと握りこんだ。
十一対一。数で表してみるとあまりにも無謀だが、しかし試合の行方はこの瞬間、レイ・ルクに託された。
「──勝って、レイ・ルク！」
私の声が聞こえたのではないだろうが、レイ・ルクはハイパーダイブモードに移った。
だがボールを奪取するには至らない。そう見るや、完全武装に入った。
「『人工化身プラズマシャドウ』──《アームド》」
フェイへのパスをカット。猛烈なスピードで敵陣に切り込んでいく。
シュートコースをロックオンするかのように、瞳の部分が閃いた。そのままシュートを放つ。
「『白尾神タマズサ』──『シキガミラインズ』！」
しかし相手キーパーは全く動じることなく、化身必殺技でこれを防いだ。
追加点には至らない。私は膝の上で両手を祈るように組んだ。
ガルのカウンター攻撃が始まる。パスカットを狙うべく走り出したレイ・ルクだが、その胸に勢いよくボールがぶつけられた。
倒れこそしなかったものの、黒い身体が数メートル後ずさる。
そして体勢を完全に立て直しきれないうちにもう一発。今度は顔面にクリーンヒットした。
レイ・ルクは、ゴール前にうずくまっていた霧野のところまで吹き飛ばされ……そして回路がショートしたのか、動かなくなった。
私たちは言葉を失くす。エルドラドチームは、誰一人として動けなくなった。
こぼれ球がフェイの足元へ転がってくる。信助は依然として立ち上がれないまま。
一秒、二秒、時間が過ぎていく。ラグナロクなんてもうどうでもいいから、天馬たちを苦しめないで──そう思ってしまう自分がいた。
「「うあああああっ！！」」
再びみんなの悲鳴が重なる。フェイがいっそう強く念動波を放出したのだ。
このままじゃ本当に天馬たちが壊れてしまう。何か、何かないか──藁にもすがる思いで会場全体を見渡したその時。
「──フェイ、指示を聞くな！」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
