825 襲い来る能力 ページ18
一方、ゴール前。二点も奪ってきたザナークを、相手チームが警戒しないわけもなく。
DF陣から一人が飛び出した。ザナークはチャージを受ける直前にレイザにパス。
そこからはボールを奪い奪われの、両者一歩も譲らない戦いが繰り広げられた。
そうして数分の時間が経過した時……フェイが、動いた。
地面に足を踏ん張るようにして立つ。風もないのにその髪が靡いた。フェイの周囲だけ、時が止まったかのように感じられた。
刹那。
裂帛の気合と共に、フェイの身体から何やらエネルギーが放射線状に沸き起こった──かと思った次の瞬間。
「うわああああっ？！」
私たちは目を見開く。天馬が両手で頭を押さえて、その場に倒れた。
天馬だけじゃない。太陽も信助も霧野も、みんな……エルドラドチーム03の面々は、同じように苦悶の表情を浮かべて次々地に伏していった。
状況を呑み込めない私たちは、狼狽えるしかない。今の今まで普通にプレーできていたというのに、急にどうして。
「何が起こってるの……なんで？！」
私の問いに答えてくれる人は、もちろんいない。
倒れているのはエルドラドチームだけ。フェイが……フェイが、何かをしたのか？
心臓の鼓動が早まり、口の中が渇いていく。今の私にできることはないとわかっていても、気持ちがはやるのを抑えられなかった。
「──これは念動波だ！」
豪炎寺さんの元へ駆けてきたワンダバの切羽詰まった声が、こちらまで微かに聞こえてきた。
「
私たちは椅子から腰を浮かせる。
本当に、フェイが……引き起こしているのか。この惨事を。
信じられなかった。信じたくなかった。こんなことあっていいはずがない。
「嘘だろ……能力は使わないって約束はどうなったんだよ？！」
狩屋が額に汗を浮かべながら訴えた。
──約束する。ラグナロクで僕たちはこの力を使うことはない。
それはラグナロク開戦前日、SARUが私たちに言ってきたことだ。まさか、そのSARUがフェイに何か働きかけたというのか。
しかしなんにせよ、早く止めさせないと天馬たちが危ない。
だがどうやって、この特異な能力に立ち向かえばいい？
「僕は敵だ──天馬の敵だ！」
フェイがそう叫びながらボールを奪い走り出した。他のガルのメンバーもそれに続く。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
