823 全員で繋いで ページ16
だが現れた式神は、強力なシュートを前に焼き尽くされていく。
そうしてボールがネットに突き刺さった。私たちはここに来て、一点を返すことに成功したのだ。
一同は一拍遅れてから、点差が縮まったことに喜びを表した。
私も私で、半ば呆然となりながらボールを目で追っていた。
スピード、テクニック、そしてパワー……どこを取っても非の打ち所がない。心の中にわずかに残っていた猜疑心はいつの間にか消えていた。
ザナークは熱狂する観客の声援を受け、高らかに笑う。
11の力──灼熱の熱風と激震する雷鳴の力で全てを貫く「オールラウンドプレイヤー」。
最後のピースが揃い、この瞬間、時空最強イレブンが完成した。
この一点は大きい。あと二点……これなら行ける！
試合再開。
ボールを持ったフェイに、天馬が必死で食らいついた。まるで自分の思いを、サッカーを通して伝えに行くかのように。
しかしフェイは頑として聞き入れなかった。
「僕の気持ちは変わらない──変えようがないんだ！」
相手の11番にパスが渡る。その選手は立ち塞がったレイ・ルクを、必殺技で抜いた。
「『デコイ・リリース』！」
別の選手へとボールが繋がってしまう。あわや三失点目か──しかしそのピンチを救ったのは霧野だった。
「『戦旗士ブリュンヒルデ』──《アームド》！」
スライディングでカット。霧野もここで初めて化身アームドに成功した。
流れが変わってきている。ザナークの一点が、チームのみんなに火をつけたのだ。
速水へ渡りかけたボールを、相手選手が強引なチャージで奪い取る。
先ほどの11番へと再びプレーが繋がってしまった。その背中から化身が顕現する。
「『豪雪のサイア』──『アイシクルロード』！」
そこにトーブが向かっていく。その目には並々ならぬ闘志が滾っていた。
「『太古の戦士ジャガウォック』──《アームド》！」
そうして見事シュートをカットすることに成功する。「ウホウホくっぞ！」と自分の胸を叩くトーブに、「いいぞ！」と天馬が声をかけていた。
チーム全体の士気が上がっている。ザナークのシュートで勢いづいただけじゃなく、天馬のプレーがみんなに力を与えているのだ。
支え、励まし、助け合う。それが私たちの、雷門のサッカー。
──フェイ。今の天馬たちを見ても、本当に何も感じない？ 古い人間は淘汰されるべきだと思っている？
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
