821 人ならざるモノ ページ14
両選手が位置に着く。
客席に戻った私たちは、神童たちにザナークのことを簡潔に話した。しかし当たり前だが、みんなの頭の上には疑問符が浮かぶ。
「クララジェーン……？」
「誰だ、そいつ？」
「適当なこと喋ってるだけじゃないすか？」
「本当に時空最強イレブンに相応しいんだド？」
猜疑心がそう簡単に拭えるわけもない。
まだザナークの加入を完全に受け入れることはできないが、点を取ってくれれば何も言うまい……そう思いながら、私は前を向いた。。
ガルのキックオフで後半戦開始。
向かっていった太陽があっという間に抜かされてしまう。そして敵はそのままザナークの方へ。
しかしザナークは腕組み棒立ちのまま、相手が抜き去るのを許した。その表情は余裕綽々といった風だ。本当に一体、何を考えているのか。
ボールをキープしたフェイが上がっていく。
そして一瞬のうちに天馬を、速水と浜野を吹き飛ばし、レイ・ルクのスライディングをかわした。
以前では考えられないラフプレー。フェイの気持ちは、本当に私たちから離れてしまったのだろうか……。
失点を防ぐべく、エルドラドのDFが立ちはだかる。
しかしフェイに警戒するあまり、逆サイドの守りが薄くなってしまっていた。天馬が指示した時にはもう遅い。
パスが通ってしまう……と誰もが思った次の瞬間。
怒涛のスピードでそこに割り込んできた影がボールをカットする。ザナークだった。
「驚いたか？ 俺様のこの動き……だが修行の成果はこんなもんじゃないぜ！」
──動きの切れがさらに増している。ギル戦の時は、とにかく力で押し切ってばかりいたのに。
ボールを奪うべくフェイが向かっていく。ザナークはそれを見越していたのか、前線へロングパスを繰り出した。
それを受け取ろうと跳躍したレイザだったが、敵の衝突を受け崩れ落ちる。
だがザナークは瞬く間にボールを再び自分のものにしてしまった。
「みんな知りたいか？ 知りたいよなあ、クララジェーンの正体！」
フィールドにいる全員に向かって話しながら、ザナークは天馬にパス。レイ・ルクへとボールが繋がった。
そうして敵のチャージをかわしながら、前線深くへ切り込んでいった。
「クララジェーンは破壊と災厄を運んでくる……あいつはさすがの俺でもビビりそうなほどすげえ奴だったぜ」
あのザナークにそこまで言わしめた、クララジェーンの正体──それは。
史上最強の、巨大台風。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
