820 武者修行の成果は ページ13
「ひとつ言っておく。俺様の新しい名は……いや、後にしよう。切り札は取っておくものだ」
私はクロエと顔を見合わせ、同時に首を傾げた。もったいぶっていないで早く言えばいいものを。
ていうか、『新しい名』ってなんなんだ。段々ノリについていけなくなってきた。
「石のジジイ！ お前との約束、守ってやったぜ」
約束。自分の中の暴れ馬を乗りこなすとかいうやつだ。
あの力の暴走は、特訓でどうにかなるようなものなのだろうか。それともどうにかできるだけの特訓を重ねてきたのだろうか。
「ではお前は、時空最強イレブンに相応しい力を手にして戻ってきたというのだな？」
「その通り──聞きたいか？ 聞きたいよなあ、俺様の特訓の話！ ならば教えてやろう！」
そうしてザナークは、誰も何も言っていないのに自分の体験談を語り出した。
自分に真の力を与える何かを探して、ザナークは様々な時代を飛び回ったそうだ。
ある時は狂暴な獣と戦い、ある時は溶岩の熱さに耐え、ある時は大渦巻に挑み……。
ミキシマックスの相手を探すのと同時に、自らを過酷な状況に置いて鍛えたのだと。
「馬鹿じゃないの？」
頬杖をつきながら話を聞いていたクロエが、ドン引きしながら言った。
私も同意見だった。なんていうかこう、もっと他にやり方はなかったんだろうか。
そして長旅の末、ザナークはとうとう『そいつ』を見つけたらしい。そしてミキシマックスすることに決めた……。
「クララジェーン──それがあいつの名前だ」
名前を言われても、誰もぴんと来ていない。もちろん私も。
響き的に女性なのかと思うけど、そんな人物が果たしていただろうか。
「そういう歴史上の偉人がいたの？」
「いや、どうだろ……私が知らないだけかもしんないけど」
クロエの問いにも首を傾げるしかない。一体どういう経緯でその人の力を得たのだろうか。
ザナークは大介さんの方に向かって力強く宣言する。
「石のジジイ！ 後半戦は俺を出してもらうぞ──FWとしてな！」
……またそんな無茶苦茶を言う。
しかし「いいだろう」と、それに頷いたのは豪炎寺さんだった。影山を控えに回し、ザナークを出すという。
パワーアップしたというザナークに賭けるつもりだろうか。だけど考え直してみれば、ザナークの突破力がなければこの状況を打破するのは厳しい。最低限のチームプレーをしてくれることを祈るばかりだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 288人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
