818 時空の懸け橋 ページ11
フェイの乱暴なプレーはそれからも続いた。太陽を、浜野を、速水を次々と吹き飛ばしていく。
セーフティエリアに転がってきたボールをセーブするべく、信助が駆ける。その目の前に立ちはだかるフェイ。
そうして──ボールを信助の身体ごと蹴り飛ばした。小柄な体が宙を舞い、ゴールの前へ転がる。
「やめるんだ！ こんなのフェイらしくないよ！」
天馬がその間に割って入った。
フェイが一番嫌っていたはずのラフプレー……それを、まるで息をするかのように行っている。その事実が耐えがたかった。
「君に僕の何がわかる？」
「わかる！ 俺には本当のフェイが！」
「本当にわかるのなら──僕の邪魔をするな！」
フェイの足が唸る。ボールを蹴り上げて、天馬が弾き飛ばされた。
その身体が地面に落ちるまでが、スローモーションのように感じられた。自分が攻撃を受けているわけでもないのに、息が詰まる。
フェイは顔色を一切変えないまま言う。
「天馬、諦めるんだ。君たちにあるのは負けのみ。このフィールドのどこにも、希望は残されていないんだ」
「っ、だからって諦めるわけにはいかない！」
立ち上がった天馬の身体は震えている。
今フェイに何かを伝えられるのは、同じフィールドに立つ天馬たちだけだ。私は手のひらに爪の跡がくっきりと残るくらい強く、拳を握り締める。
「本当に復讐なんて望んでいるの？ そんなの嘘だよね？ 俺の知っているフェイは、サッカーを復讐になんか絶対使わない！ だってサッカーが好きだから！」
フェイの表情が僅かに動いた、気がした。天馬は訴え続ける。
「思い出して！ 俺たちは一緒に色んな時代を回って、色んな人たちと巡り会ったよね？ みんなを繋いでくれた、笑顔をくれた、勇気を教えてくれた！ サッカーは俺たちの懸け橋になってくれたんだ！」
──私の頭の中には、様々な時代で知り合い、時を共にした人たちの顔が一挙に去来した。
一緒に戦った太助たち、見守ってくれたお勝さん。
勇気を教えてくれたジャンヌ。諦めない心を示してくれた劉備さん、道を示してくれた孔明さん。
命を燃やして戦った沖田さん、日本の未来を明るくしてくれた坂本さん。
母親の死を乗り越えたビッグ。私たちを率いてくれたアーサー王。
そして──私に力を授け、背中を押してくれた
色んな時代での経験が私たちの糧となった。それは全て、サッカーが繋いでくれたものなのだ。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
