808 蘇るペンギン ページ1
「邪魔するな──っ？！」
しかし。数メートルほど進んだところで、急に動きが悪くなった。その隙を突かれ、ボールを奪われてしまう。
──なんだ？ ザナークらしくない、というか……。ハーフタイムにクロエが「一瞬体調が悪そうに見えた」と言っていたのは図星だったのか？
いや、心配している場合ではなかった。ギルは到来したチャンスを零さず、カウンターで上がっていく。
「行くわよ、ギリス！」
「オーケー、メイア！」
そうしてツートップがゴール前へ躍り出た。
「「『デッドフューチャー』！！」」
この試合での得点率百パーセントを誇る、ギリスとメイアのシュート。
それに迎え撃つのはメカ円堂。メカ円堂は高らかに指笛を鳴らし、どこからともなく五匹の赤いペンギンを呼び寄せた。
「『ペンギン・ザ・ハンド』！」
そして──脅威のシュートを、がっちりと止めてみせる。
会場が湧いた。私たちも失点を防げたことに安堵し、そしてキーパーの圧倒的な力に度肝を抜かれながら、反撃に出る。
メカ円堂からボールを受け取った神童は、すぐさま前線へ切り込んだ。
「ベータ、トップスピードだ！ Aから繋いで、一気に決めるぞ！」
「任せちゃってください──おい、俺のスピードについてこれなかったら承知しねえからな！」
ベータが一瞬こちらを睨み据えてから、今日一番の速さで上がっていく。
私は死ぬ気でそれに食らいついた。敵を二人かわし、シュート並みに勢いのあるパスを繰り出す。果たしてそれは──ぴったりとベータの足元に吸い付いた。
「『虚空の女神アテナ』──『シュートコマンドK02』！」
「『リジェクション』！」
随一の攻撃力を誇るベータのシュートが、止められるはずもなく。
私たちはとうとう同点に追いついた。次に点を決めた方に、軍配が上がる……！
「ま、及第点といったところですかね〜」
振り向いたベータはOKサインを出して、私のプレーをそう評価した。
私は息切れを表情に出さないようにし、肩を竦めてそれに応える。
しかし。この状況に、敵もいよいよ本気を出してきた。
ギルのキックオフで試合再開──同時に一分の隙も無いパスで、こちらのディフェンスラインを崩しにかかった。
「『ハンターズネット』！」
「『アトランティスウォール』！」
狩屋と天城さんの必殺技も一瞬で破られてしまう。中盤で反撃の隙を伺っていた私はすぐさま自陣へ駆け戻った。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年12月28日 11時
