766 敵の本拠地 ページ9
「どこだろう、ここ……」
「弥生時代じゃねえってことは、間違いなさそうだな」
信助の問いに、水鳥が返す。
あの少年──SARUの差し金だろうか。私がそのことをみんなに話してみようと口を開いたその時。
左手の方から光が沸き起こった。
光は数名の人間を吐き出して消える。どこか唖然としたような表情をしているその人たちは──
「ええっ、三国先輩？！」
天馬たちが名前を呼びながらそちらに駆け寄っていく。
車田さんに浜野……弥生時代へタイムジャンプしなかったメンバーも、軒並みここへ集められたみたいだった。
「お前たち、どうしてこんなところに？」
「三国先輩たちこそ……」
私たちはいよいよ首を捻った。クロエや神童と顔を見合わせてみるも、そうすることで答えが分かるはずもなく。
「それがわけわからないんですよ。練習してたらいきなり──」
「諸君、ようこそエルドラドへ」
と。男の声が速水の台詞を遮った。
エルドラドという単語に、ただならない事態を感じて振り向く。
そこには二人の男がいた。
一人はパーフェクト・カスケイドの監督、サカマキ。もう一人の男は初めて見る顔だった。
どうやらこの二人が私たちをここへ連れてきたようだ。自分は今敵の本拠地にいると理解し、心臓の鼓動が早くなる。
「ここは君たちの時代から二百年後の未来都市、セントエルダにあるエルドラドの本部。そしてこの方が、最高意思決定機関統合議会エルドラドのトウドウ議長」
サカマキの紹介に、私たちは息を呑んだ。
私たちが今まで戦ってきたエルドラドの議長、ということは──この男がサッカーを消そうとした張本人。
「俺たちをどうする気だ！」
「ここへ来てもらったのは、話し合うためだ」
神童の問いに、トウドウは表情を変えずそう言った。
こちらが動くよりも先に、手を打ってきたということか。神童と天馬は、男の言葉を一刀両断した。
「話し合うことなどない！」
「サッカーは必ず取り返してみせる！」
「そのことなら心配ない──サッカーの歴史は戻しておいた」
トウドウはあくまでも冷静な態度を一貫している。指を鳴らすと、私たちの前に突如画面が現れた。
そこにはサッカー棟が映されている。立ち入り禁止のフェンスや規制線も撤去されていて、元通りになっていた。歴史を戻したという言葉の中に、嘘は含まれていないらしい。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
