765 謎の少年 ページ8
ふとそんな声がして背後を振り向く。
そこにいたのは私たちと同い年くらいの少年だった。橙色の服に黒いブーツ、白髪の下の顔には大きなゴーグル。
この時代の子……というのには、あまりにも格好がそぐわない。
前を行くみんなはこの少年の存在に気が付かなかったようで、前へ足を進めている。
「君は……？」
天馬の問いに少年は微笑んで、ゴーグルを押し上げた。
その顔を見た私はハッとする。目元や肌の色がどことなく、いや明らかに──
「天馬に似てる？」
天馬は驚いたように私の顔を見た。私は二人の顔を見比べる。
瓜二つというほどではないが、似てないところを探す方が難しい。そのくらいそっくりだった。
「それはそうかもね」
少年は含みのある物言いをしながら、微笑を崩さずこちらに歩み寄る。
「僕の名は、サリュー・エヴァン。みんな僕をSARUと呼ぶ」
──SARU。
私は身を硬くした。どういう意図があって私たちに接触してきたのか、どこに属する人間なのかが読めない。
SARUは私の方を見て、まあまあと宥めるように両手を上げた。
「そう警戒しないで……伝えたいことがあってきたんだ。とても大事なことさ。君たちと僕たちについてもね」
伝えたいこと。私と天馬はアイコンタクトを交わした。
そうしてとりあえずは、この少年の言葉を聞くことにした。私たちに危害を加えようとしているわけではないのだろうし。
SARUは私たちがひとまず聞く耳を持ったのに安堵したように頷いてから、口を開いた。
「いいかい、僕たちは──」
その瞬間、上空から紫色の光が照らし出された。
三人で天を仰ぐ。そうして、あっと思う間もなく目の前からSARUが消えた。
いや、違う……私たちがSARUの前から消えたのだ。考える暇すら与えられず、私の意識は一瞬闇の中へ霧散した。
＊
目を開けて最初に飛び込んできたのは、硬質な床だった。その数秒後、
「いたっ！」
そこに激突する。落下している最中だったのだ。
痛みに顔をしかめながら体を起こす。隣ではクロエが、同じようにして周囲を見渡していた。
「大丈夫か、みんな？！」
神童がみんなの無事を確認している。幸い全員揃っていた。
しかし一体何が起こったのだろう。SARUと話していたと思ったら、急に異空間に飛ばされた……？
そこは回廊のような場所だった。壁や天井といったものがなく、直線的なデザインで描かれた地面以外は真っ黒に塗りつぶされている。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
