807 起死回生 ページ50
「そして──Aの言葉が、俺に火をつけてくれた」
「え、私？」
急に名前を呼ばれた私は驚いて、自分の顔を指さす。神童は頷いて私の右肩に手を置き、続けた。
「勝つためには、チームをまとめないといけないと思っていた……そのことばかりに気を取られて、大切なことを忘れていた。Aのひたむきなプレーが、言葉が、目を覚まさせてくれたんだ」
自分の表情がほころぶのが分かった。そう言ってもらえたら、弥生時代での試合の時の恩返しが少しでもできたような感じがあった。
「勝ちたい」という気持ちに、私たちのとアルファたちのとで違いはない。神童はそこに光を見出したのだ。
「行こう──今なら、あいつらの力を使うことができる！」
神童の言葉に頷く。ここから──反撃開始だ。
試合再開。フィールドに再び炎の道筋が描かれる。
「『神のタクト
ガンマがキープしたボールを、俊足のベータが前線へ運び、アルファを攻撃の起点へ。ここまでは完璧だ。
しかし敵は先ほどの攻撃を警戒していた。アルファとガンマへのマークが厳重になっている。
「同じ手は通じないぞ！」
「ノー。同じではない」
「なに……？！」
敵が驚愕に目を見開いた時には、ミキシマックスを解いた私と、そして神童がゴール前へ躍り出ていた。
そうして同時に化身を顕現させる。向こうが二体の化身で挑んでくるのなら、こっちも同じように応戦するまでだ。
「『悠久の覇王クロエ』！」
「『奏者マエストロ』！」
「「──《アームド》！！」」
鎧を身にまといながら私たちは跳躍した。そして七色の旋律を奏でながら、120パーセントの力をボールに叩き込む。
「「『デュアルプレスティシモ』！！」」
「『リジェクション』！」
必殺技で応戦されても、私たちのシュートが勢いを落とすことはなかった。
エルドラドチームの得点の数字が、1から2に変わる。
着地した私たちは拳を突き合わせた。あと二点──これなら行ける！
アルファたちのプレーを見て、他のみんなにも火が付いたようだった。
エイナムがスライディングでボールを奪い、駆けあがる。
中盤から神童が走り出したのを見て、そちらにパスを回したが──ザナークがそれをカットしてしまった。
「こいつは俺が決める！」
そうして相手選手を吹き飛ばしながら、猛然と上がっていく。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
