805 浮かんだ勝算 ページ48
「ねえ、神童」
振り返ったその端正な顔には、プレーがうまく繋がらないことへの苛立ちがありありと現れていた。
だからまとまっていない考えを安易に口にするのは気が引けたけれど、それでも言わないといけないと思った。
──みんなは神童の指示通りに動かないのではなく、『動けない』のだとしたら。
即席のチームだからうまく連携できないというのももちろんあるだろう。だけどもっと根本的な部分で、噛み合わない原因があるのではないか。
この指摘はともすれば、神童から
だけど神童は真剣な表情で、私の話すことを聞いてくれた。
「神童のゲームメイク能力を活かすには、この違和感っていうか、原因をはっきりさせないといけないのかもしれない。それがわかってから話しかけろって感じではあるんだけど──」
「神童！」
会話の途中、サカマキ監督が神童を呼び寄せた。私のことは気にしないで行ってきて、と目顔で促し、神童を送り出す。
二人の会話は三十秒ほどで終わった。「なんて言ってた？」と問いかけてみたけれど、深く思案する神童の耳に私の言葉は入ってきていないみたいだった。
それからはどちらも譲らない競り合いが続いた。
ボールを奪い、奪われ。そうしてボールが再びタッチラインを超える。
神童は数秒間、自分の手のひらを見つめていた。そしてその手を、アルファたちの方へ向ける。
「──もう一度俺の指示に従ってもらう！」
その顔には苛立ちも迷いもなかった。訝しむ三人を前に、神童は自信ありげともとれる笑みを浮かべる。
「点を取りたいんだろう？ 取らせてやる！」
私はそんな神童の姿を見て、ハッと目を見開いた。
──きっとわかったのだ、この試合の攻略法が。勝利への道筋が。
「何か策がありそうですね……わかりました、乗っちゃいます！」
三人は顔を見合わせていたが、神童の指示に従ってみる価値があると踏んだのだろう、三者三様のリアクションで頷いていた。
スローインで私からボールを受け取った直後。
神童の両手から流れ出した軌跡を見た私は、思わず呼吸を止めていた。遅れて二の腕に鳥肌が立つ。
それは鮮烈で力強く、何にも揺るがない……それでいて瞬きをするごとに変幻自在に形を変える、赤々と猛る炎。
「『神のタクト
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
