804 伴わない結果 ページ47
両チームがポジションに着く。
会場の熱気は前半と比べて物凄いことになっていた。それは「絶対に三点ビハインドを跳ね除けて勝て」という観客の、応援というより脅迫じみた雰囲気によるものか。いや、考えすぎだ。
息を吸い、吐く。スタミナはある程度回復した。気合も十分。なんとしても──勝つ。
ギルのキックオフで後半戦開始。
ギリスがメイアからのパスを受けた瞬間、その身体が前に傾いた。なんと開始早々ザナークがスライディングを仕掛けたのだ。
──あいつ、言ったそばから！
そうして止める間もなく、ロングシュートが放たれる。
キーパーが素早く反応してパンチング。弾かれたボールを相手DFがセーブした。
「ザナーク！」
「俺は俺の好きにやる！」
神童の叱責も全く意に介さない。
ひとつでもプレーを誤れば失点に繋がるというこの状況で──そしてもし失点すればそれが間違いなく決勝点となるだろう──ザナークを野放しにしておくのは危険すぎる。
だけどこのチームの誰も、ザナークを止める策も力も持っていないのだった。
エイナムと相手選手が競り合い、スライディングのこぼれ球がこちらに転がってくる。
すぐさまそれをキープして走り出すと、すぐに敵がマークにつく。
ここでボールを奪われるわけにはいかない。私は覚悟を決めた。力を貸してください──
「《ミキシトランス・卑弥呼》！」
そう叫ぶや、身体中の血が沸き立つような感覚と共に、視界の隅で靡く髪が赤く変化した。
私は翡翠の瞳で相手を見据え、両手を打ち鳴らす。
「『
顕現した銅鏡が敵の身体を弾き飛ばす。
私はそのまま神童にパスを出した。神童なら必ず、勝利への一手を導き出せると信じて。
「アルファ、ベータ、ガンマ！ 行くぞ！ 『神のタクト』！」
体勢を立て直した神童が、まずアルファにパスを出す。
次に中央のベータへ。順調にプレーが繋がっている。
そして最後に前線のガンマへ──しかしキック力が強すぎたのか、ボールは頭上を越えてタッチラインを超える。
「……全然だめじゃないか」
ガンマの、不満のこもった視線が神童を射抜く。
今のプレーは全員が本気で臨んでいた。それなのにどうして失敗した？ 誰も攻撃の流れが読み取れないのはなぜだ？
そこで私は──思ってもみなかった事実にふと思い至り、その場でしばし硬直した。そして神童の元へ駆ける。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
