799 力む声 ページ42
「やってくれるじゃねえか！」
「ポジションとか関係ないんだろ？」
「なっ……当てつけかよ！」
「二人ともだめ、戻って！」
私の声は半分しゃがれたようになってしまった。エルドラドメンバーの間に割って入ったさっきのプレーが、確かな疲労となって身体に蓄積してきている。
狩屋まであんな行動に走ってしまったら、チームは本当にバラバラになってしまう。
言わずもがな、ボールを奪われた。ギリスとメイアが、またあの正確無比なパスで上がってくる。
「天城さんはメイアを、Aはギリスをチェック！」
「絶対に守るド！」
「はいっ！」
焦りを滲ませたまま、メイアとギリスを迎え撃つ。
その瞬間……手を取り合った二人の背中から、黒いオーラが噴出した。
「「『情熱のラヴァーズ』！！」」
それは双子の如く似通った、一対の騎士だった。
──二人同時に化身を出すなんて！
「っ、『悠久の覇王クロエ』──」
駄目だ、間に合わない！
二体の化身の槍が天城さんを、私を、そしてクロエを貫いた。吹き飛ばされた身体が芝の上を転がる。
そこに猛ダッシュで戻ってきた神童がゴール前に立ち塞がった……が。
「『奏者マエストロ』──《アームド》！」
騎士は一瞬にして、アームド状態の神童をも打ち払った。
「『ハートレイピア』！」
「『キーパーコマンド07』！」
メイアのシュートが、ルジクの身体ごとゴールに叩き込まれる。
0-2──また、突き放されてしまった。
あの二人の絆は相当強い。真正面から突き崩すのは至難の業だ。化身一体では太刀打ちできない。
「もう一度チームを立て直すしかない……！」という神童の声が、後ろから聞こえてきた。
試合再開と同時、神童が声の限りに叫んだ。
「俺に回せ！ 回すんだ、ガンマ！！」
それは、走り出したガンマやアルファの足を止めるほどの熱量だった。
今までに見たことのない、鬼気迫る表情。駄目だ、焦りすぎている。このまま指揮をしても上手くいかない……！
並々ならぬ熱意に根負けしたのか、それともただの気まぐれか──ガンマはボールを神童に渡した。
「今度こそ成功させてみせる──アルファ、ベータ、ガンマ！ 行くぞ！！」
神のタクトの采配が再び振るわれる。
アルファの方向へ向かって伸びた光の軌跡だったが、しかしそれはベータの進路ともかぶっていた。
二人は衝突してしまう。ボールは無情にその頭上を飛んでいった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 263人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
