796 チームの中の敵 ページ39
二人がゴールに迫る。サイドの狩屋と天城さんは、敵のマークから抜け出せないでいる。
私は腰を落とした。先制点を決めさせるわけにはいかない！
「「『デッドフューチャー』！！」」
襲い来る強力なシュート。風圧で髪が暴れる。私は大きく息を吸い込んで、クロエを顕現させた。
「『悠久の覇王クロエ』──《アームド》！」
鎧を纏い、シュートを蹴り返そうとしたが──五秒ともたなかった。吹き飛ばされ、アームドが霧散する。
「『キーパーコマンド07』！」
そしてルジクの必殺技をも軽々と破り、合体技がゴールへ突き刺さった。
0-1。私は地に伏したまま、モニターの表示が変わるのを見つめた。
「A！」
神童が駆け寄ってきて助け起こしてくれる。肩を借りて立ち上がりながら、私はギリスとメイアに視線を据えて呟いた。
「あの二人、強い……！」
蹴り返した瞬間に分かった。彼らは今までの敵とは格が違う。これが
しかし弱気になってはいけない。絶望を少しでも抱いてしまったら、そこから突き崩されてしまうだろう。
試合再開。
神童が、前線のアルファにパスを出す──が。
「遅いんだよ！」
ベータがコースに割り込んだ。しかしボールをキープするにはやや距離が足りなかった。つま先に当たったボールが弾かれ、ガンマの元へ飛んでいく。
「これで同点、僕の得点──！」
シュート体勢に入ったガンマだったが、相手DFに防がれる。ボールがタッチラインを超えた。
ベータが呆れたように肩を竦める。
「あら、せっかくパスしてあげましたのに」
「──何故邪魔をした」
「はい？」
アルファがベータに向き直った。その顔は相変わらずの無表情だが、どこか静かな苛立ちを称えているように見えなくもない。
「私がパスを受けていれば、決まっていた可能性は高かったはず」
「あなたが私に駄目出ししちゃうんですかぁ？」
「ケンカなら手貸すよ！」
「オルカ、余計なことはするな！」
オルカとエイナムまで加わり、フィールドのど真ん中であわや乱闘が起ころうとしていた。
私と神童は慌ててその間に入る。
「いちいち突っかかっちゃ駄目だって！」
「そのエネルギーは相手のゴールへ向けろ！」
「まあ、ご立派ですこと……」
四人はそれぞれの位置へ戻っていく。
──なんとか主導権をこちらへ取り返さないと。試合時間は無限ではない。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
