794 真っ向からの反駁 ページ37
「わしが求める時空最強イレブン──その十一人目となる可能性は持っとる。わしの指示に従って修業を積むのだ」
「ふん……断る」
「なに？！」
ザナークは立ち上がって大介さんに詰め寄った。不敵な笑みを再び顔に張り付けて。
「いいか石のジジイ！ どうやらお前は俺様の本当の力をわかってねえようだな。すでに俺はその時空最強イレブンの力に達してるってことを、次の試合で証明してやるぜ！」
次の試合で……って、まさか早速出場するつもりなのか。
みんなの表情がみるみる曇っていく。きっと私も同じ表情をしているだろう。ただでさえ統率の取れていないチームに、我の強すぎるこいつが投入されたらどうなるか……考えたくもない。
「好きにしろ。どうせ言っても聞かんのだろう」
サカマキ監督が、半ば投げやりな口調で言う。
それを聞いたザナークは口角を持ち上げて笑い、「そう言うと思ったぜ」と、お決まりの台詞を返すのだった。
＊
「ああ……いたのか、女」
それは通路で整列した時、私の真後ろに並んだザナークが発した言葉だった。まるで私の存在にたった今気づいたかのように言う。もしかしたら本当にそうなのかもしれない。
私は不快感を隠さずに振り向いた。毎回毎回、偉そうに……今ここにクロエがいたら、真っ先に反論していたのだろうか。クロエはさっき私の中に戻った。
「女、女って言わないで。私にはAAって名前があるんだから」
「てめえの名前には興味ねえが……いいか、試合が始まったらまず俺にボールを寄越せ。そうすりゃ五点十点軽くもぎ取ってやる」
怒りを通り越してもう呆れてきた。どうしてこう、誰も彼も自分のことしか考えていないのだろうか。
小さくため息をつき、視線を真っ向から受け止める。そしてはっきりと否を突き付けた。
「馬鹿言わないで。ザナークドメインのキャプテンだった時と同じようにできると思ってたら大間違いだからね。勝ちたいんなら、チームの一員として私たちの指示を──っ？！」
視界が一瞬ぶれた。かと思いきやすぐ目の前にザナークの顔があった。
片手で乱暴に頬を挟まれ、引き寄せられたのだ。咄嗟のことに反応できなかった私の顔を数秒間無遠慮に見つめたザナークは、にやりと笑みを浮かべた。
「前よりか、ちったぁいい目をするようになったか……威勢のいい女は嫌いじゃねえぜ」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
