793 呉越同舟 ページ36
そして未だ見つかっていない11の力──灼熱の熱風と激震する雷鳴の力で全てを貫く「オールラウンドプレイヤー」。
「大介さん、十一人目は例えるなら誰のような、というのはないんですか？」
葵が巾着袋の中に向かって呼びかける。宙に浮かんだ大介さんは考え込んでいたが、ややあって呟く。
「あえて言うならあの男だ。敵にいた、ザナーク……」
告げられた名前に、私たちは目を丸くした。
まさか、あいつがそうなのか。大介さんの言葉の意味をすぐに飲み込むことはできず、しかし神童が真っ先に反論する。
「ザナークって……待ってください、敵が十一人目というんですか？！」
「あいつからは熱風のような熱さ、雷鳴のように暴れ狂う激しさを感じた。奴がもし味方になるならば、条件を満たすやもしれん」
私は宙に目線を彷徨わせて思案した。
過去に時代における二度の戦い、そして昨日の試合……確かにザナークの力は相当なものだが、しかし時空最強イレブンに引き入れるというのは、あまりにも。
それにザナーク本人がそれをよしとしないだろう。私たちの方についても、何のメリットもない。そう言おうとして私は口を開く。
「確かに、あいつから強いパワーは感じましたが──」
「そう言うと思ったぜ」
そして割り込んできた声に、ハッとした。
振り向いて目を剝く。ベンチに座っていたのが、話の渦中である本人だったから。
「ザナーク、どうしてここに？！」
「あいつらのやり方、なんか気持ち悪いんだよなぁ……あれならエルドラドのジジイの方が、まだかわいく見えちまったぜ。そういうわけで、そっちに混ぜてもらうぜ？」
ザナークは指を私たちに向け、そう宣言した。
何が「そういうわけで」なのかちっともわからない。自分が得するようにしか動かない男と思っていたのに、「気持ち悪い」という理由で寝返るだなんて。
「ふざけるな！ そんなこと認められるか！」
「俺も反対だ。お前は信用できない」
ガンマと神童が否を突き付ける。皮肉にもこの時、初めて雷門とエルドラドの意見が合致した。
「悪いが俺はもう決めた」と、余裕の態度を崩さないザナークの前に、大介さんが浮かぶ。
「まあ待て。確かにお前の力は凄い。しかしわしに言わせれば、物足りん！」
「そう言うと──なっ？！ この俺が物足りんだと？！」
目を見開くザナークに、大介さんは淡々と自分の考えを語った。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
