791 次なる相手 ページ34
「俺たちにはもう後がない。相手が誰だろうと、負けるわけにはいかない！」
しかしエルドラドの面々は聞く耳を持たず。
結局、両者の亀裂は埋まらないままここまで来てしまった。こうなったら試合中に、連携がうまく運ぶよう私たちが働きかけないといけない。
と、通路の方から足音がした。見れば天馬と信助、葵がいる。その一歩後ろには剣城もついてきていた。
天馬は胸の前で小さくガッツポーズを作り、神童に意気込む。
「今日の試合勝ちましょう、絶対に！」
「なんか同じチームみたいな言い方だな」
後ろで狩屋がそんなことを言う。神童は「いや、三チームに分かれていても俺たちは一つのチームだ」とそれに返し、天馬たちに向き直った。
「天馬、信助。今日の試合必ず勝って、お前たちに繋げる。最終戦は頼んだぞ！」
「「はい！！」」
「私たちも絶対に勝ちます！ 頑張ろうね」
一年生たちが決意を新たにする中、クロエはその横を通り過ぎて剣城の前に立った。そして落ち着いた声音で問いかける。
「怪我の具合はどう？」
「大事には至ってなかった」
「そっか。よかった」
そうしてクロエが次に発したのは──「お疲れ様」という労いの言葉でも、「もう無茶しないでね」という窘めの言葉でもなかった。
「剣城たちがもぎ取った一点、無駄にはしない。絶対に勝ってサッカーを、みんなを救うよ」
その横顔を見た私は、束の間息を止めた。
そこには並々ならぬ決意が現れていた。初めて出会った頃のような頼りなさは、そこにはない。
……こんな顔を見せるくらい、成長したのだ。今まで共に過ごしてきた月日の思い出が、不意に頭の中に去来した。
「──ああ。頼んだぞ」
剣城が頷いたと同時。ワープポイントに二人の人物が現れた。
少年と、少女。こちらの方に歩きながら、少女が口を開いた。
「ふうん……あたしの相手は貴方たちなんだ。なんかつまんなそうなのに当たっちゃったなぁ」
薄紫色のロングヘアにエメラルドの瞳。少年の方はゆるくパーマのかかった白髪にスクエアの眼鏡といった出で立ちだった。
それらの顔には見覚えがあった。エルドラド本部を襲撃した時に……。
「あのとき、SARUと一緒にいた──」
「あら〜、覚えていてくれたんだ？」
私の言葉に、少女はクスリと笑みを漏らす。その左手にキャプテンマークがはめられていることに、その時気が付いた。
彼らが、今日の対戦相手。私たちは反射的に身構える。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
