790 全てを救うために ページ33
フェイはSARUたちと同じ、
SARUはフェイの、
博士は歴史改変に異議を唱えていた──フェイを私たちの時代へ差し向けてサッカーを守ろうとした。これは全てSARUの読み通りだった、と。
フェイは嘘をつける人間じゃない。私たちと心を通い合わせるためには、記憶を消すのが一番だった……。
「さっきの試合で、フェイの記憶が戻ったんだね。だから……」
クロエの声は、どんどん萎んでいった。
フェイの今までの姿は演技ではなかった。それは記憶が失われていたからだ。あとに残ったのは「サッカーが好き」という純粋な気持ちだけだった。
アルノ博士は最初から、フェイがSARUの手によって差し向けられたことに気づいていたらしい。
しかし気づいていながら、博士はSARUの策略に乗った──それはフェイの目が透き通っていたからだという。
フェイならきっと、自分のなすべきことに気が付くと信じて。そして
知らず拳を握り締めていた。
私たちの双肩にかかるものは、果てしなく重い。
しかし戦わねばならない。そうして勝って、フェイを救うのだ。でないと、やはり……サッカーを救ったということにもならないと思うから。
＊
翌日。
第二試合を目前に控え、本番前特有の緊張感を胸に抱きながら、私たちは更衣を済ませて通路に集合した。のだが。
「で、俺たちのチームは──なんでこのユニフォームなんだ？」
倉間が言って、両手を広げる。
私たちはエルドラドのユニフォームで試合に臨むこととなった。私も改めて、自分の姿をまじまじと見つめる。
「いいじゃないですか、動きやすいし」
狩屋の言う通り機動性はなかなかだが、体のラインがはっきり出るデザインなのでちょっと恥ずかしい。
クロエも「いいじゃん、結構似合ってる」とは言ってくれているけれど。
「二回戦、どんな奴らが相手なんだド……」
天城さんが奥の通路に目を向けながらそう呟く。それに対して神童が、チーム全員に向けて力強い言葉で返した。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
