785 突き放されていく点差 ページ28
「『海王ポセイドン』──『ヘヴィアクアランス』！」
「来い──『ゴッドハンド�勝戞�」
三国さんは新必殺技で、相手の化身シュートを止めることに成功した。私たちは目を見張る。
あれは……十年前のFFI決勝で、日本の相手であるリトルギガントのキーパーが使ったという伝説のキーパー技。私たちが時空の旅に出ている間に、三国さんたちも確実なパワーアップを図っていたのだ。
前半戦も残りわずか、得点は0-0。先制点を決めたチームに、後半戦で追い風が吹くだろう。
「『もちもち黄粉餅』！」
黄名子のセーブから、フェイへボールが渡る。二人の選手を抜き去ったフェイは、そのままゴール前へ躍り出た。
「『光速闘士ロビン』──『満月ラッシュ』！」
「無駄だ！ 『深淵のアギラウス』──『ギガバイトスクリュー』！」
しかし難なく止められてしまう。黄名子とフェイはミキシマックス状態に入った。
「《ミキシトランス・マスタードラゴン》！」
「《ミキシトランス・ビッグ》！」
その後もザンの猛攻は止まらない。ミキシマックス状態の選手が二人いたってお構いなしだ。
「『スプリングアロー』！」
そしてとうとう先制点を奪われてしまった。モニターの表示が無情に、0-1へ切り替わる。
まだ、取り返せる点差だ。私は祈るように膝の上で両手を組んだ。
試合再開直後、チャージを受けた錦がボールを奪われる。
その相手選手の前に、なぜかザナークが立ちはだかった。そうして驚いたことに、ボールを奪って駆け出していく。
そこに持ち直した錦が割り込んだ。因縁の対決、激しい競り合いの末に勝ったのは──ザナーク。
「『ディザスターブレイク』！」
パワーアップした必殺技で、エルドラドゴールを割った。0-2……この局面で突き放されてしまった。
その後もザンは荒いプレーで迫ってきたが、しかしどこか様子がおかしい。
ザナークを完全に無視している。ここに来て仲間割れだろうか。しかしザンにとってはその選択が正解だったようだ。
「『黒き翼レイブン』！」
怒涛の攻撃で三点目をもぎ取られる。
私は拳を握り締めた。ザンはラフプレーが激しいが、その前にサッカーの実力も群を抜いている。
みんなの体力も底を尽きようとしていた。後半で巻き返せるか……。
「まだまだ！ 一点ずつ返していきましょう！」
向こうの客席から天馬の激励が飛んだ。その声が聞こえたのか、みんなの瞳に灯がともる。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
