784 暴力の嵐 ページ27
と。キーパーの投げたボールが剣城の足元に転がってきた。
剣城が前線へ走り出したその瞬間──その目の前に大柄な選手が立ち塞がった。そうして激しいチャージを食らわせる。
「剣城……！」
クロエが腰を浮かせて叫んだ。剣城は倒れこそしなかったものの、衝撃に顔をしかめている。
だが。
「「ブレイクアタック！！」」
背後から三人の選手が襲い掛かった。
足で、肘で、剣城の身体を執拗に痛めつける──それはもはやプレーの域を超えた、ただの暴力だった。
剣城の身体はとうとう地に伏した。相手チームの選手がそれを見て高らかに笑う。そいつは昨日、私たちに噛みつこうとしていたガロウだった。
ボールがタッチラインを超え、短いホイッスルが鳴る。雷門のみんなが剣城の周りに集まった。
クロエが席から立ち上がる。フィールドを見る青い瞳は、不安げに揺れていた。
剣城は右足に怪我を負ったようだった。これ以上のプレーは望めそうにない。だがエルドラドチーム01の選手数は十一人……交代要員はいない。
剣城はプレー続行の選択を取ったようだ。しかし立ち上がったその身体はふらついている。あれでは走るのでやっとといったところか。
敵は明らかに剣城を痛めつけるのを目的にしていた。超能力を使わなければ、何をしてもいいと思っているのか……。
試合再開。スライディングでボールをカットした錦が上がっていく。
ガロウは次のターゲットを錦に据えたようで、選手にブレイクアタックの指示を出す。
「『クロシオライド』！」
錦は必殺技でそれをかわしたが、ミキシマックスを解除した隙を狙われた。肘打ちを食らった身体がよろめく。
そこに一乃がカバーに入った。青山にパスを出し、必殺技で確実に敵を抜く。
「『プレストターン』！」
しかしすぐに相手のチャージを受け、吹き飛ばされてしまう。そこに走り込んでくる影があった。
「『ダッシュトレイン』！」
車田さんのガッツが、プレーを繋げることに成功した。ボールはダーナ、そして錦へ。
「『戦国武神ムサシ』──《アームド》！ 『伝来宝刀』！！」
「『深淵のアギラウス』──『ギガバイトスクリュー』！」
これも得点には至らない。
キーパーが投げたボールが、チーム・ザンの選手の間を目まぐるしく駆け巡る。早い──動きを目で追うのがやっとだ。
そして一瞬のうちにFWへボールが繋がってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 263人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
